第4話 強敵

 お腹がふくれたことで、殺気を消したハジメ。

 死神しにがみちゃんは、どこか残念そうだ。

「これからどこへ行きましょうか」

「えっ」

 ハジメは、まったく考えていなかった。このあとも一緒にいるつもりはなかった。

 そんな男の気持ちはまるでわかっていないようで、死神しにがみちゃんは指で数えながらぶつぶつつぶやいている。

「まずは遊園地ゆうえんちでしょ。それから――」

「おい」

 ハジメから殺気がみなぎった。当然だ。わけのわからない相手とは一秒たりとも一緒にいたくない。

 その相手は、妙な顔をしながら胸のあたりを押さえている。

「うっ」

「うっ。じゃない。解散だ。通報つうほうしてもいいんだぞ」

「おごってもらってそんなことしても、信じてもらえますかねぇ?」

「ぐっ」

 ハジメにダメージが入った。意外に打たれ弱い。

 これまでなめてかかっていた死神ちゃんが、意外に強敵かもしれない。ハジメの認識が変わった。

 妙な髪飾りも、何らかの意味があるのかもしれない。ドクロをデフォルメしたような形の、これまで見たことがない物体も。男の思考速度が上がっている。

 周りの客は、わたしたちをカップルと思っているに違いない。と、死神しにがみちゃんは考えていた。

「楽しみですねぇ」

「……」

 そして、ハジメは何も言わなかった。


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