第2話 死神ちゃん

 平日。

 家の門を開けに出たハジメは、待ち伏せされていた。

「おはようございます」

「お、おはよう」

 その少女は、昨日会った、あの少女だった。背は低めで、学生のように見える。

 いぶかしがるハジメ。ストーカーに違いないと思っていた。

 門越しの会話が始まる。

「すごいですね。殺気さっき

「さっき? 昨日のことじゃないか」

 ハジメは、殺気さっきの出しかたがわからないようだ。鬼気迫ききせま気配けはい。特定の人には感じることができるらしい。

 かみ合わない会話。

「そうじゃなくてぇ」

「もう仕事の時間だから」

「仕事って、なんですか?」

掃除そうじだよ」

 門を開けたハジメは、いつものように掃除そうじの仕事に出かけた。その場で震えている少女を残して。


 休日。

 再び、謎の少女が現れた。

 この前と同じく、門の前に立っている。ツインテールが風になびく。

 残念なことに、時間がある。ハジメは断るのが苦手だ。ゆっくりと、門を開いた。

殺気さっきの出し方、教えてください!」

「知らないから。帰ってくれ」

 ハジメには殺気さっきをコントロールできないようだ。それもそのはず、思いどおりに殺気さっきをあやつれる人のほうがまれである。

「名前、教えてください。わたしのことは、死神しにがみちゃんって呼んで――」

「えっ」

 ドン引きする様子を隠さないハジメ。

「わたしは名乗ったじゃないですか。教えてくださいよ」

「名乗ってないじゃないか」

「だから、死神しにがみちゃん、って」

「呼びたくないなぁ」

 乗り気ではないハジメ。

「教えてくれないなら、師匠ししょうって呼びます!」

「それも勘弁かんべんしてくれ。ぼくの名前は、宝田たからだハジメだ」

「はい。師匠ししょう!」

 短髪の頭をかくハジメ。もはや、彼にはツッコむ気力もなかった。


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