足音の静かな掃除屋
多田七究
第1話 出会い
これは、普通の
普通に
ハジメが
「ちょっと。足音。足音立ててよ」
「すみません」
職場のおばちゃんに、いつのまにかうしろにいることを驚かれたハジメ。
彼は、足音の静かな
ハジメには、秘密がない。
彼は、ウソをつかないから。
ハジメには、特技もない。
とくに人に
ハジメには、彼女もいない。
今日も一人で帰路についた。
桜の花が咲いている。朝晩はまだ肌寒い。季節は春。
そのとき、前を歩く人物が空き缶をポイ捨てした。すこしイラっとした様子のハジメ。
ハジメは、人並み外れた
「ちょ、ちょっと、いいですか!」
不意に声をかけられ、ハジメは一瞬だけ殺気を向けてしまった。声の主に。
しまったと思ってももう遅い。できるだけ平静をよそおって声を返す。
「あ。はい」
声をかけてきた少女の様子がおかしい。いまにも悶絶しそうに身もだえて、ツインテールが揺れた。さすがのハジメも、年下に見える女性には優しい。態度にそれが現れていた。
「
「本当に?」
「
これ以上食い下がっても仕方がない。
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