第201節 初めての焦り (共闘討伐編56)

「ああ。ありがとう。」

こうして一試合を経て、獣も今回の戦いに参加することが認められた。

「だが、あくまでも基本は見ていてくれ。」

「何故だ。俺よりもお前の方が強いのだから戦いにおいては俺が最初戦うべきだと思うが?」

「…戦力的にはそうだろうが、戦いは今までの様な空き地や廃村ではなく、首都だ。それも様々なインフラがある街中だ。お前の能力をも 充分に活かせるところではないと思うぞ?それでも戦うのか?」

「ああ、俺は戦いの中でしか成長出来ないと思っているし、実際、この間の戦いでは戦いの中で成長することができたからな。」

「だから戦闘時には俺が見ていろってか?」

「そうだ。それにお前は最高戦力であるのと同時に伸び代だってある。だったら、俺が先に戦って情報を少しでも得てからの方が確実だ。」

「お前が先に戦おうとする理由は分かった。だが、俺がさっき言った街中での戦闘だぞ?充分に戦えるのか?」

「それは問題ない。俺だってお前と同様に成長しているし、街中での戦い方は考えてあるからな。」

「分かった。なら、もう何も言うまい。」

「感謝する。」と、夢の中で一試合と一通りの話を終え、目を覚まし、現実世界に戻った。

 目を覚まし、布団から照は上半身を起こしてから布団を出て、部屋に置いてある時計をまだハッキリしていない目で見た。

 すると、照は焦り、急いで用意されていた朝食を速やかに食べ終え、最低限のことだけをして家を飛び出した。

 因みに何故照がこんなに焦っているのかと言うと、今日が修了式だからだ。

 マジになれば普通に間に合うが平穏を求めている照にとって下手に人間離れした行動を誰かに見られるのは平穏が脅かされることを示すので、出来る限り電車やバスを使って行こうとしている。よって、照は現在非常に焦っているのだ。

 そして、照はなんやかんやで最寄りの駅のホームに辿り着いたのだが…。

《…現在、事故の発生とその点検によりダイヤに大きな遅れが生じております。申し訳ありません。》

 と、いう構内アナウンスが照の耳に入って来た。

 そして、アナウンスを聞いた後、ホームの電光掲示板の時刻表を見ると照が乗る予定の電車はまだ来ていないどころか、まだ、6時前の電車がホームで止まっていた。

(…不謹慎だとは自分でも思うが…。良かった…これで遅刻をしたとしてもしょうがない理由が出来た。ありがとう、事故を起こしてくれた方に感謝します…。)

と、自分で自覚しているが、不謹慎にも事故が起こったことを照は感謝していた。

 その後、照はホームに着いてから40分程待ってから電車の座席に座って目的地の最寄り駅に向かい、その途中の乗り換えをする駅でも同様の理由で遅延が発生していたりとトラブルは合ったものの、目的地に着いた時には既に人は来ていたがパラパラと多少生徒が体育館にいるだけで安堵した。

 その後。無事、全員が体育館に揃い、滞りなく修了式は終わった。

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