第186節 取り敢えずの平穏4 (共闘討伐編41)

「よし、それでは体育の授業を始める。」

その後、体育の授業では能力を無意識に使わないように、そして他の生徒より突出しない様に神経を使って授業に取り組んだ。

 これは照にとっては予想外の修行機会になり、そして無事に授業は終わり、意外と良い修行にもなった。

 次の授業は科学だったが、運良くこの日は実験回だったので席をくっつける必要なく終了し、科学で復学初日の授業は終わった。

 その後は帰りのHRをして校舎を出た。

校舎から出ると彩羅が彩羅より少し大きいくらいの男子生徒?と校門前で待っていた。

 何を思っていたのか知らないが彩羅達2人の周りは少し盛り上がっているようだ。

 照が2人に近づくと1人の女子生徒が照の前に割って入る様に現れ質問して来た。

「…彩羅さんの彼氏?」

「俺に聞いているのか?」と照は自分の顔を指差しながら聞き返した。

 それに女子生徒が頷き、その周りにいた生徒数人も同様に頷いている。

「違う。」

「そうなの?」

「ああ、何を思っていたのか知らないが俺達はこの後予定があるんだ。すまないが、道を空けてくれないか?」

「私からもお願いします。」

彩羅が言うと周りの生徒達はすんなりと道を空けてくれた。

(ま、確かに彩羅は容姿は当然ながら性格も良いからな。俺が休学していた1ヶ月程の間に高嶺の花になるのも当然か。)

  おかげで労することなく学校から帰ることが出来た。

 そして、暫く歩くと学校は見えなくなったので駅に向かって歩きながら照は彩羅に問いかけた。

「そろそろ紹介してくれないか?」

「すみません。こちら、松浦光侍(まつうらこうじ)君です。」

「初めまして照さん。今、ご紹介いただいた松浦光侍(まつうらこうじ)です。」

「…ああ。悪いがまだ君に挨拶はすることは出来ない。」

「何故でしょうか?」

「光侍君、君は確かにエネルギー的には戦力になりそうだが…実際に闘わなくては判断できないな。」

「…では試験をするのですか?」

「いや、まだその話はしない。光侍君、君に聞くことがある。正直に答えてくれ。」

「分かりました。」

「今、君が俺と一緒にいるのは彩羅が『会って欲しい人がいる』等と言われたからか?」

「いえ、自分から彩羅さんにお願いしました。」

「何てお願いしたんだ?」

「強くなりたい…と。」

「…ふむ、そうか。お願いが曖昧だな。君の中で明確なイメージはあるのか?」

「イメージ、ですか…?」

「そうだ。明確な『こんな風になりたい』とか『◯◯みたいに強くなりたい』とあるのか、と聞いているんだ。」

「ありません。」

「なら、駄目だ。」

「…そうですか。」

「…諦めきれないか?」

「はい。」

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