第182節 蹂躙と撤退 (共闘討伐編37)

最初こそ男は物一に付いて行っていたが、直ぐに対応出来なくなり、物一の言った蹂躙が始まった。

 物一は自分の能力を使って男を中心に兎の様に跳び回り、男に近づく度に槍で男にダメージを与え、そして跳ぶ度に速度が上がり速度の上昇と比例して攻撃力も上がり、最初は涼しい母をして物一の攻撃を受けていた男だが、徐々に険しい顔になり、余裕も無くなり、最初の物一に対する上からの態度は消え、怯えるようになっていた。

 それも、当然のことだ。

何故なら、物一は男が戦意を失って尚、攻撃を続け、心が折れてようやく止めたからだ。

「じゃあ、もうこの国には来るなよ?来たなら、今度は今回よりも徹底的に痛ぶった上で、じっくりと殺すからな。」

「わ、分かった。もう来ない、だから離してくれませんか。」

「…さっきの言葉、この耳でしっかりと聞いたからな。後で撤回なんてできないぞ。」

「も、勿論、分かっています!」

「なら、さっさと行け。」

物一は男の胸ぐらから手を離した。

 男は力無い足取りで港の方へと撤退して行った…。

 「…お前、また先走ったのか。」

「し、照さん!なぜここに⁈」

「ま、俺の方はぼちぼちだったが、片付いたからな。で、聞いたらここに居るってのを思い出して…で、来たってわけだ。」

「成程。それで今、雄人さんは何処に?」

「それをここで言うわけないだろ…。」

 「そりゃ、そうですよね。」

「んじゃ、取り敢えず九州支部に向かうか。」

 照と物一は歩いて九州支部に戻った。

九州支部、千癒の執務室。

「どうでしたか、外の様子は?」

 「…俺には分からん。」

「…そうですね、さっきのデカい気配を放っていた奴以外には特に何もありませんでした。」

「そう…、ありがとう。」

「んじゃ、俺は東京に戻らせてもらおう。」

「いえ、まだ報告をして頂いていませんし…」

「報告なら龍牙を通して既にした筈だが…?」

「確かに聞いていますけど、もう一度照さん、貴方の口から報告を聞きたいのです。」

「…分かった。で、向かった理由から話した方が良いか?」

「その必要はありません、向かった先であったことを話すだけで構いません。」

「分かった。じゃ、そうしよう。」

照は千癒にあったことを事細かに報告した。

「…えっと…、今なんて?」

「だから門番だった男を外と中両方から溶かしたと…。」

「…前は貴方がいなかったから言えなかったけれど、何してんのよ‼︎」

「何って…何の問題もないだろ?危険を未然に防いだんだからよ…。」

「それはそうだけど、人に新技を試すなんて…今回は悪人だったから良かったけど、お願いだから余りそういうことはしないで下さい。」 「分かったよ。それじゃ、俺は自分の泊まる部屋に行かせてもらうよ。」

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