第180節 九州にて…3 (共闘討伐編35)

「いや、違う。」

「何故そう思うのですか…?」

「俺は照さんから火花さんの護衛を引き受け、火花さんと一緒にいたからな。」

 「なるほど…。」

「それに…俺達を見ていた奴からは殆ど気配を感じ取れなかったからな。」

 「ということは…。」

「おそらく威嚇だろうな、『これ以上邪魔をするな』という意味を込めた…。」

「…しかし、今の感じは多分ですけど僕が戦えばこの気配を持つ奴の実力を知ることができるかもしれません。」

 「…こっちに来るならともかく、こちらいけば余計な火種になりかねないからな…。」

「…分かりました、僕が探知してみましょう」

物一は集中して強い気配を放っている奴の探知を行った。

 「…!」

「どうした…⁈」

「気付かれました、僕が探知しているのが。」

士と桜は驚いた。

 2人は照に修行を付けられたわけではなく、荒んだ顔で公園のベンチで2人で座っているところを千癒に救われ、独学で修行をし、千癒に気配の探知方法を教わったが、探知に長けているわけではないので照に直接教わった物一の探知がバレたことに驚いたのだ。

 「聞くが、逆探知はされそうか…?」

「…なんとも言えません。奴の気配は大きいですが、それが実際の強さとイコールではないと照師匠に言われたので。」

「…そうか。では現段階で結論を出すのは早いかもな。」

「ええ、そうね。」

「すみません、僕、行って来ます。」

「おい、待て!」

「待ちなさい!」

物一は士と桜の静止に耳を傾けることなく支部から出ていき、そのまま能力を使ってその気配を放つ者のところへ向かった。

 「…俺も行くか。」

「私はここに残るわ。」

「分かった、ここは任せたぞ。」

「ええ。」

ところ変わり支部から南西に数キロ先。

 物一が能力を使って数分で気配を放つ者のところに辿り着いた。

 「お前は何者だ…?」

物一が問いかけた男は周りを見回してから自分の顔に指差して「…自分?」という感じの顔をしていた。

 「そうだ、お前からは黒く、強い気配が出ているからな。」

「そうか…、さっき俺を何処からか探っていたのは君か…。」

 「だったら何だ?」

「そうか…では消えてもらおう。」

男は探知のできる物一は都合が悪いのか突然物一に攻撃を仕掛けてきた。

 だが、物一はその攻撃を最小の動きで回避し、逆にそれを利用してカウンターを決めた。

 カウンターを喰らった男の左頬からは少しの出血と物一の拳の跡があった。

 「…ったく、いきなり攻撃してくるなんて物騒だな…。」

「き、貴様…この俺にこれほど簡単にダメージを与えるとは…何者だ?」

 「それはこっちが…だ、お前は何者だ?」

「俺か…?俺は四統のお一人、北玄(ほくげん)様の部下の1人で、北滅(ほくめつ)という。」

 

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