第175節 北にて…4(共闘討伐編30)

「…!」

 獣は吐血しながら風を纏った空壁にあたっている脚に全身の力を集めた。

 「…ハアーーーッ‼︎」

照の体を使った獣は雄叫びを上げ更に力を振り絞って風を纏った空壁を突破し、男の心臓に蹴りが直撃した。

 蹴りが直撃した男は大量の吐血をしながらも立っていた。

 そこに5人の中で紅一点の女が深手をおった男の下に行き回復させようとしていたが共闘関係にある組織の助っ人が女の右腕を掴むと女から力が抜けていった…。

 「ア、アンタ…私に何をしたの…?」

「何ってアンタの能力(ちから)を俺の身体に吸収させてもらったんだよ。簡単だろ…?」

 「ふ、ふざけ…ない……で…。」

女はバタリとその場に気絶する様に倒れた。

 「ま、これで取り敢えず情報を聞き出す人間は確保出来たな。」

「だな。そんで…お前は誰だ?」

「んなことは今、どうでも良いだろ。」

 「そうだな。怨〈エビル〉装甲!」

マライは怨念を形にした紫の鎧を身に纏った。

「〈カグツチ・バースト〉装甲!」

獣から体の使用権を戻した照は真紅の鎧を身に纏った。

 「なんだ…あれは。あれがあいつらの戦闘形態って訳か…。」

 「今度はこっちが試してやろう…。」

残りの3人が照とマライに走って近づいてくる。

 それに対して2人は防御態勢にならず、唯エネルギーを其々炎の玉として溜めている。

 そして、照は炎の玉とは別に左脚にもエネルギーを溜め、そのまま脚を振り切って紅いの衝撃刃を敵三人に向かって放った。

 向かって来ていた3人は残り1メートル程に近づいたところで紅い衝撃刃が飛んできた。

 3人は走るのを止めたことで直撃はしなかったが片腕の皮が爛れ、更に腕の一部の筋肉が溶けてしまった。

 そして3人が直撃を回避した衝撃刃は地面に着くと『ジュウウウ…』という音と共に横3メートル深さ40センチ程の溝を作った。

 「今の攻撃は…あいつか…!」

「凄まじい戦闘能力しかもあの様子からして今の紅い衝撃刃は片手間で放ったモノっぽいな。」

「ったく、聞いてねぇぞ。こんなバケモンがこの国にいるなんてよ。」

「だが、隣にいる奴も攻撃を放った奴程ではないだろうが、また脅威だ。」

「おい、マライ。奴等の動きが止まったな」

 「そうだな。だがこのままじゃあ折角作ったこの玉、無駄になっちまうからよ。このまま奴等にぶつけねぇか…?」

「…そうだな、そうするか…!青炎玉〈ブルーフレイム〉。」

「私怨玉〈エヴィルボール〉。」

と其々呟いてから手を振り下ろしてエネルギーで作った玉を3人に向かって投げた。

「おい!ヤバいぞ、早くしろ!」

 「分かっている、落ち着け!」

と、あたふたしている3人の前に雷の纏った空気の壁が現れた。

 「…君達は何をしているんだ?」


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