第156節 執拗に (共闘討伐編11)

「ありがとうございます!」

「ですが、こちらからも条件を出させていただきます。」

「勿論、どのような条件でしょうか?」

「私と同じ立場、“10貴士”の誰か、若しくはそれに並ぶ実力の人間を現場に送って下さるのであれば整い次第、九州に向かいましょう。」

 「承知いたしました。では、そのようにします。」

「では成立ということで。私は準備に入るので退室いただけますか?」

「失礼しました。」

        ・

 高校の入学式1週間前、市長室。

俺は今、非・常・に困っている。

 というのも、この少し優しげな雰囲気な市長さんに執拗…に。

 「表彰させていただけませんか?」

と、何度も頼まれていて、その度に断っていたのだが、どこから聞きつけたのか。

 俺はいつのまにか英雄的な扱いになっており、特定はさされていないようだが、電車の車内でも噂される程に広まっているので、とても困っているのだ。

 「…どうしてそんなに俺を表彰したいのか、教えていただけませんか?」

 「それは当然の疑問ですね、貴方はこの街の英雄ですから教えましょう。これは市民達の総意でもあるのですが、私達は貴方様に助けられたのです。」

「それは、紙でも口頭でも何度も聞きましたよ。」

「しかし、貴方が表彰されることで目立ちたくないというのは重々理解していますが、これは市民達の『英雄を讃えたい』という総意もあるので、何としても行わねばならないのです。」

 「…分かりました、根負けです。引き受けましょう。」

「ありがとうございます!」

 「しかし、条件を出させて戴きます。」

「どのような…?」

「俺ができる限り目立ちたくないというのは知っていますよね?」

「ええ、勿論。」

「ですので、メディアは入れないでいただけますか?これを呑めないのであれば引き受けることはできません。」

「分かりました。つまり、メデイアが入らない非公式かつ、小規模であれば引き受けていただける、ということで宜しいでしょうか。」

「はい。」

「では、次に表彰を行う場所を決めましょう。」

「俺はここで良いのですが…」

「ではそのようにしましょう。」

 4月末、俺は非公式ながら表彰され、市民に向かって英雄として認知されることとなった。

         ・

そして現在、俺のことを見るなり指差しで「英雄様!」と言われるようになった。

正直悪い気はしないがやはり落ち着かない。

 それに一番俺が困る要因が…。

「おい、照、お前一つの街を救ったって本当なのかよ…⁈」

と、学校でいろんな人に男女問わず聞かれることだ。

 俺はその度に

「さぁな、俺は記憶力が乏しいから分からないな。」

 と、答えている。

そして、場所は変わり…。

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