第125節 満足 (侵犯編33)

「悪いが…次で決めさせてもらう!」

「はは…まさか、ここまで善戦できるなんて思いませんでしたよ。」

「それは俺達も同じだ。」

物一も報鳥の言葉に相槌を打って、同意見であることを示している。

 照は左足にエネルギーを溜め始めた…

照の左足にうっすらと薄紅の炎を纏っている、これによって…エネルギーが最大まで溜まったことがよく分かった。

 (『まずい…』)

照は続いて飛び上がり、高さが3メートル程になったところで左足を振り切り、炎を帯びた衝撃刃を4人に向かって放った。

 照が飛び上がったのと同時に凍士は厚さ20センチ、高さ2メートルの氷壁を形成した。

 が、照の放った炎を帯びた衝撃刃は凍士の必死の抵抗も虚しくあっさりと切断し、4人に迫った。

 物一、火花、雄人は回避したが、凍士は回避しきれずに衝撃刃は掠りこれまでの蓄積したダメージと今の攻撃の合計によって体を支えられずに武舞台に横に倒れ込み、照対凍士、火花、雄人、物一の変則試合は決着が着いた。

 「凍士が武舞台に倒れた為…勝者、照!」

 照は龍牙の言葉を聞き、両腕を天井に向かって勢い良く突き上げ、顔も天井を見上げて、『よっしゃあーーっ』と歓喜の雄叫びを上げた。

 そのポーズを30秒以上続けた。

「…照、嬉しいのはよく分かった。だから、その…勝利のポーズはもう良いだろう?」

 「そうか、すまない…」

照は龍牙に言われて勝利のポーズから普通の状態になった。

 そして、照も倒れたままの凍士の元に移動した。

 照を含めた5人全員が倒れた凍士の元に集まった。

 そして10分後。

凍士はゆっくりと目を明けて上体を起こした。

 「少しあの世が見えましたよ。」

「本当に馬鹿だな、お前は。手合わせで死にかける程に力を出し尽くすなんて…」

「はは、ありがとうございます。」

「それにしても…凍士、お前照に似てきたんじゃないか?」

「…?ありがとうございます!」

「…俺は満足だ。」

『…?』

「なんで?私達は4人がかりで…しかも、最後はかなり滑らかな連携を取っていた筈なのに勝てなかったし…照、貴方が満足した理由が分からないわ。教えてくれるかしら…?」

 「…そうだな〜、俺が満足した理由は大きく分けて2つある。一つ目はお前等の成長を感じたことと、さっきの試合な中で協力の仕方を覚えてくれたことだ。」

「二つめは…?」

「俺もさっきの手合わせを通して成長出来たことだ。」

 「成程ね…。それで、話は変わるけど…最後の攻撃、あれに技名は付けないの?」

「技名か…、そうだな……うーん…うーん…」

「やっぱり難しいようね。」

照はまだ悩んでいるようだ。

 「…良し!決めたぞ!」

「…!教えて下さい!師匠!」

「名付けて…『炎蹴刃〈えんしゅうじん〉てのはどうだ?」

…5人は何も発さず、黙ったままだ。


 

 


 

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