第123節 “ヒコナ” (侵犯編31)

他の3人も火花の言葉に相槌を打っているので同意見なのだろう。

 「確かに、肉体的にはまだ余裕がある…だが、精神的に余裕がある訳ではない。」

『えっ…‼︎』

照は右足にエネルギーを集め、その右足には少しずつ薄紅の炎が纏われている。

 4人は本能で悟った…。これはマズイと、万全の状態であればさっきのように守りに徹するという方法を取ることも出来た…が、

「来るわっ‼︎雄人!」

「ああっ!分かっている!」

報鳥は火花の指示全てが出る前に行動に移った。

 4人と照の間は大体5メートル程離れているが、その距離某ゲーム原作アニメの技の様に一気に詰め、照が技を放つ前に体当たりで阻止し、照は僅かにではあるものの吐血している。

「爆え…っ…!」

照は報鳥の、全速力の突撃によってダメージを与え、顔を歪めた…が、右足の高めたエネルギーをそのまま報鳥に狙いを変えた照はそのままの勢いで報鳥に向かって足を当てようとしたが突っ込んだ直後に照の身体から離れたことで間一髪…紙一重で直撃は回避することが出来た。

 「…ぶっなかったぜ…。」

「本当に間一髪だったみたいね…」

報鳥は直撃こそ回避したが、左頬から出血している。

 「まだやるか…?」

「と、当然やるわ…」

「お、同じく…」

「僕も…です…」

「はあ…雄人、お前はどうする?」

「俺もやるに決まってるだろう!」

「はあ…そうか。」

照は突然顔を歪め、体が武舞台に着きそうになるほどに崩れ、大量吐血し、〈カグツチ〉と〈トライアル〉の重ね掛けが解けた。

 (…‼︎まだ10分程しか経っていないはず…だ…何故…)

 報鳥は今がチャンスだと思い、走って照に迫り、全体重を右足に乗せた蹴りを体勢の崩れている照に浴びせようとしたが、照は背中を起こすことでそれを回避した。

 が、そこに左足の蹴りを追撃で仕掛けてきた。

 照はそれを何とか体勢を直して、体全体を使って受け流した。

 「くそっ!イケると思ったのにっ!」

「…嘘。あんな状態でも攻撃を捌けるなんて…あり得ないっ!」

 といった感じで4人は呆気に取られていた。

その間に照は息を切らして、体がフラフラとよろめきながらもゆっくりと身体を起こした。

そして…

「自動回復〈ヒコナ〉…」とふらつく体に鞭を打ち、小さく呟いた。

 ここで4人は『ハッ』となって、今度は4人全員で照に迫り、攻撃を連続で仕掛けた。

 「「くそっ!」」

「色々しているのに…」

「殆ど、攻撃が通っている気がしない」

そして、肉体的ダメージが一定程度回復すると若干の切り傷等軽傷だけになったところで〈ヒコナ〉を解除した。

 「くそっ!折角追い詰めていたのに…」

「与えたダメージの半分は回復したか…」

 照は今一度集中して、エネルギーを高め始めた…

 『まだ、諦めない!』

 





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