第116節 一歩 (侵犯編24)

俺は一縷の望みをかけて帰省した。

 大阪に帰省してから4日目、俺は虫利の捜索に注力していた。

 今は大広場のベンチで休憩をしている。

そこに千癒さんがやってきた。

 「照さん…、おーい。」

千癒は照の顔の前で手をブンブンと振ったり、手を叩いて音を出したりしたが全然気づかない。

 千癒は奥の手として照の耳に軽く息を吹きかけたすると、驚き照は千癒に気づいた。

 「…照さん、大丈夫ですか?項垂れていたみたいでしたけど…」

 「実は…」

俺は項垂れていた理由を説明した。

 「成程、それは先程の様に項垂れてしまうのも分かります。」

 「ありがとう、話したらちょっと楽になった。」

 「…良かったです。それと伝えておきたいことがあって…」

 「…言って下さい。」

「実は先週、虫利らしき少年を見ました」

「本当ですか?何処で…⁈」

「…う、梅田ですけど…」

「そうか…」

「まさかとは思いますが、駅に向かおう何て思っていませんよね?」

 照は千癒の問いに答えようとせず、黙ったままだ。

 照は踵を返し、そのまま駅に向かおうとした。

 が、千癒は照の腕を掴んで必死に照を呼び止めようとした…が、やはりパワーは照の方が圧倒的に上であり、今の照は高めたエネルギーが具現化せず僅かではあるもののそのまま漏れ出ている。

 「放して下さい。」

「放しません…」

 「放して下さい…」

「放しません!」

「放せ…!」

「放しません!絶対にっ…‼︎」

 「何故止める…⁈俺は今すぐ助けに行きたいのに…!」

 千癒は照の右頬に全力の平手打ちを当てた。

 そして、照の身体から僅かに漏れ出ていたエネルギーが止まった。

 「……ありがとうございます、おかげで冷静になることが出来ました。」

 「どういたしまして。それでは、話の続きをしましょうか。」

 「お願いします。」

「先週の土曜日、私は友人と一緒に息抜きに行く途中で10代後半くらいの青年について行くのを見ました。」

 「…因みに何処に行ったか分かりますか…?」

「それは分かりませんでした、申し訳ありません。」

 「謝る必要はありません。虫利を取り戻すのに確実に一歩前進しましたから。」

 「そう言って頂けると少し気が楽になります。」

「いえ、さっきのお礼とでも思っておいて下さい。」

 「分かりました。また、何か分かり次第報告しますので、失礼します。」

 千癒さんは一通り俺に報告をするとそそくさと去っていってしまった。

 翌日、俺は一通りのトレーニングと捜索を終えて、母親の実家の使っている部屋に戻っていた。

 するとそこに報鳥から電話がかかってきた。

 「…情報を手に入れたぞ。」

「本当か!どういう情報なんだ…⁈」

 

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