第115節 失踪 (侵犯編23)

その後…解散し、其々の帰路に着いた。

 翌日、俺はユウタの散歩とイメージトレーニングを終え、今は家の中で高不可の筋トレをしていた。

 そこに火花から電話がかかってきた。

「…どうした?」

 「実はちょっと聞いて欲しいことがあるんだけど…」

「あぁ、何でも言ってくれ。俺にできることなら何でもしてやる。」

 「実は、虫利がいなくなったの!」

「…本当なのか…?」

「当たり前でしょ!冗談でこんなこと言わないわよ!」

「それで何時からいないんだ?」

「今日の昼過ぎからよ。」

 「友人と学校で遊んでいるんじゃないか…?」

「あの子はそう言うタイプじゃないわ。遊びに行くなら行くでしっかり言うもの」

 「そうか…。それで、親父さん達には伝えたのか?」

「ええ、既に伝えてあるわ。」

「そうか…分かっていると思うが、落ち着いて行動しろよ。」

 「ええ、分かっているわ。」

「そうか。確認だが、警察は知っているのか?」

「いえ、知らない筈よ。私も含めて関係者は誰も通報はしてないし、交番にも行っていないから。」

 「そうか…なら、できるだけ少人数で捜索しよう。」

「そうね、黒鉄達には既に捜索を開始してもらっているわ。」

 「そうか、俺達も明日から捜索を始めよう。」

 「ありがとう。それと…」

「分かってる。協力する様に頼むさ。」

「…うん、ありがとう。」

そして、火花は俺との電話を切った。

 翌日。

俺は学校で彩羅とディアと連絡を取り合う約束をし、帰ってから、報鳥に捜索を手伝って欲しいことを伝え、快諾して貰った。

 そして…凍士に電話をかけた。

「はい…」

「今、大丈夫か?」

「…師匠、どうされましたか?」

「お前、虫利のことは知っているか?」

「…いえ、知りません。」

「そうか。じゃあ、手短に話す…」

俺は火花から虫利が失踪したことを凍士に伝えた。

 「成程…よく分かりました。ですが申し訳ありません。学校ではいつもと同じ様に楽しく僕等と過ごしていて何も変わったところはありませんでした。」

 「そうか…癒天は何か言っていたか?」

「いえ、特には…。多分ですが…僕と同じく彼女から見ても変化がなかったのだと思います。」

「そうか…ありがとう。ことが大きくなる前になんとか見つけ出す為に協力してくれ。」

「はい、勿論そのつもりです。」

「そうか、ありがとう。何か情報を掴んだら教えてくれ。」

「分かりました!」

「ああ、頼む。」

 俺は凍士との電話を切った。

その後1ヶ月俺達は虫利の捜索を何度も同じ場所を探したり、千癒さんや鉱己にも捜索を手伝うよう頼んだが手掛かりさえ掴むことが出来ないまま、俺達は冬休みに突入した。

 俺は一縷の希望をかけて帰省した。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る