第111節 できること (侵犯編19)

この場にいた全員が安堵の表情をした。

 「さて…と、本題に入るか。今の俺の報告を受けて、取るべき対策があるなら構わず言ってくれ」

 最初に発言したのは火花だった。

「私は寧ろ奴等の策を利用すべきだと思うわ。」

「火花さん、どういうことですか?」

「まぁ、そんなに難しいことではないわ。

奴等は私達を狙っている。なら、奴等にわざと捕まれば良いと思うわ。」

 「成程…」

「…ひとまずこの案は保留にしよう。他に意見のある者は遠慮なく言ってくれ」

 俺の発言を受けて次に榴が発言した。 「では僕から、僕は現状維持をすべきだと思う。」

「と言うと…?」

「そんなに難しくはない。折角奴等の方から近づいて来ているのだからわざと捕まる。ここまでは火花さんと同じ。だが、ここから違う。奴等は恐らく最高幹部ではなくても、幹部は関わっているだろう。」

「成程!榴さんの案が分かりました!」

「彩羅さん、どういうことなのか教えてくれませんか?」

 と癒天は質問した。

「あの人等は私達11人を狙って行動する。なら、こちらからは動かずに現状維持で狙って来たところを利用する。所謂カウンター作戦てことですよね…榴くん?」

 「ああ、合っている。付け足すとすれば火花の案はうちから奴等を崩壊させることだが、僕の案は崩壊させることではなく、内から徹底的にに情報収集することが主だよ」

 「他に案のある者は?」

俺は周りを見回しいないことを確認して、

 「いない様だな、目的が違うと言えども奴等を利用するという作戦案…確かに有効だろう、普通の犯罪集団であればな…」

「師匠、どういうことですか?」

「言葉通りだ、奴等は普通の犯罪集団ではない。奴等はこの国を壊すだけでなくこの国を私物化しようとしているんだ。そんな奴等が2人の提案した作戦に気づかないと思うか…⁈」

 俺の発言を聞き、全員が黙り、会議室は静まり返った。

 少しの時間を置いて…

『…!』

「全員分かったようだな。そう、恐らくさっきの2人の作戦を実行に移そうとすれば勘付かれる可能性が高い。更に言えば、逆に俺達が奴等に利用されかねない。」

 「じゃあどうすれば…」

「警戒レベルを最大にして生活する意外に俺達に出来ることはない。」

 「そうですか…。因みに最もリスクが高いのは誰ですか?」

「本人には言ってあるが、龍牙さんだ」

「えっ…⁉︎」

「どういうこと⁈」

「これは俺の推測だが…恐らく奴等にとって最も重要な存在が龍牙さんなんだろう」

「…それで?」

「つまり、奴等にとっての鍵が龍牙さんなのではないかと思っている。」

「そうでしたか…ではぼくが護衛に」

「お前はまだ小学生だろうが。」

「そうでした」

「お前の心意気は有難いが必要は無い」

「何故ですか?」

「簡単な話だ。龍牙さんが俺に次ぐ実力者だからだ。」

「成程…」

「分かった様だな…では解散。」

龍牙の締めの言葉で全員が其々の家に帰った。


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