第107節 説明 (侵犯編15)

「そういうことだ。」

凍士がゆっくりと目を開けた。

「良かった、気が付いたみたいだね」

 「…ここは?」

「ここは僕とお前が通っている学校の校庭だよ。」

「お前、何があったか覚えてるか?」

 「ちょっと待って下さい…」

俺と虫利はうなづいて了承した。

 暫く経ち、凍士は何か思い出した様だ。

「何か思い出した様だな、話してくれ。」

 「はい。僕は7月の末、いつもの様に持久走をしていると突然容姿が10代後半くらいの男が僕の顔に向けて何かを吹きかけられ、僕が目を瞑っている間に何かで口を塞がれて僕は気を失ってしまいました。」

 「そうか…、その男から邪悪な気配を感じたか?」

「いえ、感じませんでした。」

 「そうか…。俺にはお前が内から抗おうとしていた様に見えてたが実際はどうなんだ…?」

 「はい、その通りです。さっきは言いませんでしたが、僕はずっと薄暗い空間の中で濃い黒で高校生くらいの男の人のような姿をした何かを払い退けようと奮闘していました。」

 「やはりそうか…」

「はい。ですが途中で奮闘し続ける気力も体力も尽きてしまったのです。」

 「成程、よく分かった。それじゃあ、今度は俺達が見たことを教えよう。」

 凍士は俺の言葉に首を縦に振って同意したことを示した。

 「虫利。まずはお前が見たことを伝えろ。」

「はい。上手く言えないのだが、なんというかお前は少し暗い…違うな。とにかく心体共に新しいな感じがしていた。」

 「そうか…多分その時はまだ俺の意思が回復していなかったんだと思う。」

 「成程、次は俺だ。さっきまでのお前を俺からの視点で話そうと思う。」

 「分かりました」

「さっきまでのお前は苦しんでる様に見えた上に、動きに一貫性がなかった。」

 「それは僕が内で奮闘していた時だと思います。それでしばらく奮闘を続けましたが…気力、体力共に尽きてしまいました」

 「そうか…それで苦しんでいた所から急に俺に襲いかかってきたという訳か。」

 「そうだと思います。」と言って、凍士は首を縦に振り肯定した。

 「そうか…それで、体はどうだ?」

「はい、問題ありません。」

「そうか…良かった。」

「あの…照さん…一つ聞きたいことがあるのですが…」

「何だ…?」

「凍士を助けたさっきの技はどういうものなのでしょうか…?」

 「……詳細は言えないが、現段階ではさっきの状態にならないと使えないということは言っておこう。」

 虫利は納得しかねる態度でこちらを見ている。

 「納得できてなさそうだな…」

「はい」

 「だろうな…しかし、ここでは絶対に話すことは出来ない。話す機会はまた別で作る。だから、納得してくれ!」

 「分かりました。」




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