第106節 責任 (侵犯編14)

「…分かりました。」

 「さて…と。」

俺は集中力を高め…眼を金に変化させた。

「…ケテ」

 「…⁈」

「タ…ケテ」

「…何か言っている様です。」

「…その様だな。それに最初の攻撃から動こうとしないぞ…?」

 「た…ケテ…サイ」

「…何か苦しんでいる様に見えないか?」

 「確かにそう見えますね…もしかして、アイツも抗っているのかもしれません。」

 「分かった。なら、俺もアイツの師匠として“責任”を持って元に戻してみせる!」

 「分かりました!僕に出来ることはありますか?」

 「最初に言った通りだ。」

「分かりました」

 虫利は俺のところから離れ、学校の外に出た。

 「今からお前を戻してやるからな…。」

凍士はさらに苦しみだした。

 「そうか…お前も、内側から抜け出そうと抗っているんだな。」

 凍士から目の光が消え、意識を無くしてしまったようだ。

 「…仕方がない。先ずは、気絶させるしかないな。」

 凍士は意識を失ったまま、獣の様な叫び声を上げて俺に襲いかかってきた。

 「悪いが少し寝ていてくれ。」

俺は凍士の鳩尾(みぞおち)に少し強く右拳でのパンチをあてて、気絶させた。

 「…終わりましたか?」

「まだ来るなっ!」

俺の言葉を聞いて虫利は学校内に入ろうとしていたが、それをやめた。

「…モヤが出てこない、今までなら出て来ている筈なんだが…」

  俺は凍士の意識がまだ回復していないことを確認してから〈ドリーム・ダウン〉を使って記憶の塗り替えを試みたが先程と同様にモヤが出てくることはなかった。

 俺は新技を試すことにした。

照は視力上昇状態を一度解除し、心を穏やかな状態にしようと再び集中力を高め始めた。

 すると、照の体が赤、茶、桃の3色の光に包まれ、最大まだその3色の光が強くなってから襲撃を受けた際と同じく光が照の体に収束、変化して濃い黄色の薄い鎧をその身に纏って光の中から現れた。

 「心復〈リム・ハート〉」と照が小さく呟くと凍士の体が薄い黄色に包まれ、細かく震え出した。

 暫くして…細かい震えから大きな震えに移った。

 更に暫くすると、今までと違う物が凍士の体から出てきた。

 それは濃い黒の煙だった、その煙は3〜5分程ずっと凍士の体から継続して出ており、その煙はもう一度凍士に取り憑こうとしていたが俺の新技〈リム・ハート〉の効果によって失敗し、凍士の体から出てきた大量の濃い黒の煙は一つの巨大な煙となってこの場から去っていった。

 俺は終わったことを虫利にジェスチャーで伝えた。

 虫利は俺と倒れている凍士の下に走ってきた。

 「本当に終わったんですか?」

「ああ、間違いない。さっきの煙は見えたか…?」

 「はい、濃い黒の巨大な煙ですよね?」

「そうだ。それがこの場から去った…つまり…?」

「終わったということですね!」

「そう言うことだ。」

 


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る