第101節 情報交換と擦り合わせ (侵犯編9)

彩羅は俺の方をチラッと見た。

 どうやら、俺に最初に話すことを判断して欲しいらしい。

 「…九州の話からしてくれ。」

「分かりました。九州の知人の話では福岡市等の都市部を中心に虚な状態の人がいるらしく、沖縄諸島ではそういった異変は起きていないとのことでした。」

「次は俺が…」

「照、悪いけど次は私よ!」

「何で…?」

「何でも良いでしょっ⁈」

俺は内心呆れながらも、「…どうぞお先に。」と火花に譲った。

「ありがとう、じゃあ私から…私は鉱己から北海道全体ではなく、『僕の仲間との連絡が突然取れなくなりました。』と言っていたわ。」

「そうか…今度こそ、俺の番だな。

俺は千癒さんから九州と同じような異変が起きているという噂があるという話を聞いている。」

 「中部でも同様のことが起きているとのことです。」

「あとは情報の擦り合わせを…」

「照…悪いけど、先に僕から追加で話したいことがある。」

「分かった、話してくれ…」

「察しているとは思うけど、全国で虚な状態の人が増えてきている…」

「そうだな。」

「そして、凍士くんとの連絡が途切れた」

「そう言えば、最近あいつ見かけないな…。…!」

「考えていることは多分合ってると思う。」

「それじゃあ、情報の整理と擦り合わせをするとしようか。」

4人はうなづき、俺に賛同した。

 「さて…今までで集まった情報は沖縄等の一部を除いて、全国にいるということ。

 そして、俺達の体験からその人達は奴らによって暴れさせられている可能性が高い。最後に凍士との連絡が途絶えた…ってところか。」

「そうね…こうやって確認してみると、奴らに意識を弱められる人材がいるのかもしれなかわね。」

「そうだな…、3人はどう思う?」

「僕は…そうだな…最低限の感情だけを残して吸収していると思う。」

「私とディアも榴さんと同じ意見です」

「そうか…じゃあ、一度龍牙さんのところに報告に行こうか。」

「それはやめた方がいいと思う。」

「何故だ?」

「龍牙さんは僕達にこの件を任せた、そうだろう…?」

「ああ、そうだ。」

「なら、事後報告の方が確実なんじゃないか?」

「それは分かるが、一度報告する為にも戻るべきだと思うが?」

「分かるけど…」

「分かった!なら、俺だけで龍牙さんのところに報告に行く!それなら構わないだろう…?」

「分かった…それで行こう。」

こうして…榴の家の地下での有意義な情報交換と擦り合わせは終了した。

        ・

翌週の日曜日、俺は八王子にある龍牙さんの家に来た。

 ちょっとしたお屋敷の様な感じだが…只々、煌びやかというよりは全体を通して落ち着いた雰囲気の見た目の家だった。

 しかし、俺はまだこれが序の口だと後で知ることになる。

 俺の仲間は金持ちが多いと、この時確信した。

 しかも、龍牙さんを含めて当人達は全く気づいていない。

 中でも龍牙さんは一人暮らしなのにかなり広い地下室を作れる程に資金がある。

 俺でなければ、聞くだけで嫉妬で狂い悶えると思う。

 などと考えていると、龍牙さんが玄関から出てきた。


 

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