第87節 “カグツチ” (設立編53)

「ほう、お前も人間だったか。なら、何故先輩にあんなことをした。」

 「それはあの女が俺を楽しませてくれたお礼だ。」

「鉄の棒を先輩の身体に突き刺すことがか?」

「そうだ。」

「そうか…。お前はもう喋るな、吐き気がする。」

「調子に乗るなよ…⁈この小童がぁーー‼︎」

 「無駄なことをするな。余計、テメェをぶちのめしたくなっちまうだろう?」

と言って、照は珊瑚のパンチを左手の人差し指だけで止めた。

 「なっ‼︎俺の渾身のパンチが…‼︎」

「無駄なことをするなと言っただろう⁈」

「ぐっ…‼︎」

 「地獄炎球〈ヘルズ・ボール〉…」

珊瑚の周りに直径3メートル程の炎の球が現れた。

「なんだこれは!身体が焼ける、溶ける!回復が追いつかん!どうなっている!」

「当たり前だ、俺の能力は感情具現化〈リア・ハート〉感情を具現化させる能力だ。

 俺の言いたいことは分かるな…⁈」

「くそったれ!突破してやる!」

「そうくるだろうと思ったぜ…」

『パチンッ』と、照は指を鳴らして〈ヘルズ・ボール〉を解除した。

 「お前、何故解除した!答えろっ!」

「まぁ、見ているんだな。」

この日、首都圏全域で真紅の光の柱を見たのと同時に震度2程度の小さな地震を観測したという。

 『ドンッ‼︎』という凄まじい轟音が照を中心に校庭中が真紅の光に包まれた。

 「良いですか!絶対に校庭に入らないで下さい!骨すら残らず、即死します!」

 そして今度は、真紅の光が照の身体に収束して、所々尖っている真紅の鎧を形成した。

 「何だ、その鎧は…⁉︎」

「これか?そうだな…逆鱗ノ鎧〈カグツチ〉…って感じか?まあ、貴様が知る必要は無い。なぜなら今から完全に消えて無くてなるからな。」

 珊瑚は本能で悟った。会議の時に何故、ボスがこの男に戦いを挑んではいけないと言っていた理由を今になって心から理解した。

 「くそっ!俺はボスの為に…。」

「そうか。お前はあの男に命令されてここに来たってことか…」

 ここであの時の男がやって来た。

「いや、違っ…。……!ボ、ボス…す、すまねえ。俺の所為で…。」

「そう思うなら。少しでも僕の役に立ってくれよ。君は戦闘に関しては頭が切れるんだから…。」

 「お、おう!」

「残念だが、お前の願いは叶わないぞ。何故なら、俺が今からコイツを完全に消し去るからな。」

 「…ッ」

「さぁ、地獄を噛み締めな‼︎」

 「せめて、一矢報いてやる!」

珊瑚は照に全速力で向かってくる…

「炎熱の壁〈フレア・ウォール〉…。」

と照はボソりと呟くと、自身の前と珊瑚の後ろにうっすらと巨大な手が現れた。

 「さあ、終わりの時間だ…くたばれ!

珊瑚!虚空の炎〈フレア・ゼロ〉っ!」

と照は言い、珊瑚を巨大な両手で包んだ上で凄まじい熱で一瞬のうちに珊瑚の体を溶かした。

 「ふう…駆除完了。」

そして照は火花の下へ直ぐに駆け寄った。

「先輩!無事ですかっ⁈先輩!」

「おい、療ニ。先輩は無事なのか⁈」


 


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