第88節 回復の兆し (設立編54)

「おい、療ニ。先輩は無事なのか⁈」と言って、照は急いで火花に駆け寄った。

 火花の下に着くと、鉄の棒が突き刺さっていたことが分かる丸型の痕と意識を失い、校庭に倒れている火花の姿が照の目に入ってきた。

 「おいっ!先輩は無事なのかっ‼︎」

「はいっ。意識を失ってはいますが、死んではいません。」

「そうか、良かった…」

ここで、救急隊が到着した。

 到着した救急隊は速やかに先輩を救急車に乗せてその救急車に俺と先輩の担任の教師が乗った。

 そして救急車は病院に向かった。

あの男は気が付いた時にはいなくなっていた。

 学校近くの大きな病院に着いた。

着くなり直ぐに手術だと思ったら、重病棟に運ばれた。

 俺と先輩の担任は病院の入口に待機していた。

 暫くして…

俺と先輩の担任は病院の中に通された。

 そこで医師に言われたのは今すぐ手術が必要な程ではないが、予断を許さない状況でいつ目を覚ますかも分からないとのことだった。

 「そうですか…。先輩が安定したら直ぐに連絡してください!すっ飛んで来ますから!」

「…わ、分かりました……。」

そして俺はその説明をしてくれた医師との連絡先を教えてもらった。

 俺と先輩の担任が病院から出るともう日が沈みかけていた…。

 俺と先輩の担任が学校に戻ると誰も学校から帰っていなかった。

「何で、誰も帰っていないんだ⁈」

俺の問いに答えたのは物一だ。

「照さんこれは皆んなの意思なんです!」

「誰も帰ろうとしなかったのがか⁈」

「そうです。それで火花さんの容体は⁈」

「ああ。余談を許さない状況らしいが、

取り敢えずは大丈夫らしい。」

「そうですか…、良かった……。」

皆んな先輩が無事だと知って安心したのか、やっと少しずつそれぞれの家に帰り始めた…。

 皆んなが帰った後、事態の当事者として俺とホープそして彩羅が職員室に呼ばれ、何故あの珊瑚と名乗った男の一団が来るのを知っていたのかを話した。

先生たちは半信半疑という感じだったが、行動に合点がいったのか、俺たちの説明を信用してくれた。

 そして日が沈み切った、午後7時頃に俺達3人は学校から出た。

 そして、家に帰るとニュースでついさっきの出来事が速報で報道されていた。

 と言っても、俺達のことは報じられていない。なので恐らく、学校に襲撃に来た、珊瑚のことと、戦いの終盤にやって来た男について報道されていたのだろう。

 そして、学校で俺が珊瑚を溶かしてから一ヶ月程がが経過した。

 3月17日。

担当医から先輩が一般病棟に移されたという連絡を受け、俺はその時行っていた精神トレーニングを切り上げて先輩が入院している病院に直行した。

 そこには落ち着いた様子で病室のベッドで横になっている先輩を見た。

 俺は未だに目を覚さない先輩の手を握って、目を覚ますように願った。

 暫くして、俺が握っていた先輩の手が微かに『ピクッ』と小さく動いた。

 しかし、この日はこれ以上のことは起きなかった。

 だが、先輩の回復の兆しを俺は感じた。

その後、俺は学校の卒業式に参加した。

 しかし、先輩がいないことによる微かな物足りなさを感じた。

 

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