第86節 真価と賭け (設立編52)

互いに能力を上乗せした近接戦に移行した。

 「破壊連続拳〈ディス・ラッシング〉」

火花は極限の戦闘の中で自身の能力の真価を無意識に発揮した。

 それは熱だけではなく、炎をも扱うことが出来るようになったのだ。

「炎熱連続拳〈デュアル・ラッシュ〉」

 しかも、熱との合わせ技というアレンジを加えて、扱っている。

最初こそさっきの火花の攻撃によって男が劣勢だったが、少しずつ火花が劣勢になった。しかし、これは当然の結果である。普通の人間であれば数日は消えない火傷であったとしても、超人はそのレベルを数時間で自己回復することが出来る為、“超人”同士の戦闘において状態異常は大きなアドバンテージにはならないのだ。

 「お前はそこまでのようだな…。」

「いや、まだよ。これは賭け…。だけど、アンタを止めることが出来るなら惜しくはない!」

「超危険:炎熱形態〈ハザード:サクヤ〉」

 「おお、素晴らしいぞ!こんな奥の手を隠し持っていたとは…!このエネルギー量、ボスも満足してくれる筈だ。まだ、楽しめる、お前は最高だっ!もっと続きをしよう…!」

 「今の私には、アンタのくだらない遊びに付き合う余裕なんてないの!だから…」

「良いぞ!来いっ!俺をもっと楽しませろ!俺を満足させてくれ!」

火花のこの姿〈サクヤ〉は超短時間しか使えない上に、照があの男との戦いで見せた黒い鎧と同じくらいの負担を強いる姿である為、これで仕留める若しくは撤退させることができなければ恐らく珊瑚と名乗った男に殺されるだろうと、火花自身も思っている。

 火花の速度は凄まじく、神速とまではいかずとも、100メートル3.2秒の速度が出ている。

 珊瑚は全く火花の動きが見えていないようだ。

 しかし…。

『ガシッ』と、珊瑚に捕まってしまったのだ。

 「くそっ、最悪…」

そして…「グワァーーーーッッッ‼︎‼︎」と凄まじい呻き声を火花が上げたのを聞いてから。

「ついに万策尽きた様だな。なら、あの世へ送ってやる。」とボソりと呟くと、

男は火花を門の一部だった鉄の棒が刺さっているところまで引き摺った上で珊瑚は門の一部だった鉄の棒をゆっくりと掴み。

 「やめろ、やめるんだ…やめろ、珊瑚ーーー‼︎‼︎‼︎‼︎」

 火花の腹筋に狙いを定め、勢いよく振り下ろした。

 そして、さっきよりも大きな呻き声を火花が上げたのを確認してから珊瑚は学校から去ろうとした。

 (最悪だ…まさか完成に近づいている実感を1番感じるのがこんな時だとは、俺は良くも悪くも勘がよく当たる。)

 「おい。テメェ、何を勝手に逃げようととしてんだ⁉︎」と一言言ってから、照は珊瑚達に向かって全力の殺気を放った。

 珊瑚の部下達は全員が死に。

そして、珊瑚自身も蛇に睨まれた蛙のように身を竦ませて一切動けなくなっている。

「よくも…。初めての友人を…、そして俺の大切な女性(ひと)を。」

 「…何をボソボソ言ってやがる。」

照はゆっくりと珊瑚の方へ歩いて行った。

 「ほう、お前も人間だったか。なら、何故先輩にあんなことをした。」

 

 



 


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