第78節 帰省4 (設立編44)

「そうですか…」

(良かった…。虫利が馴染めてるみたいで)

「それから、あの子は私達の姉弟になったわ。」

「てことは…」

「そう、私の両親の養子になったの。」

「あいつの実の両親は当人から話を聞いた限り、どうしようもない程の糞親だったそうですけど大丈夫でしたか?」

「ええ、何の問題もなくあの子を養子にすることが出来たと言っていたわ。」

「そうですか」

「私の親も嫌そうな顔をしながらあれ程のゴミ親は初めて会ったと言っていたわ。それとあの子の実の両親はお金が欲しかっただけらしいから直ぐに養子にできたとも言っていたわ。」

2人は悪意のある視線を感じた。

「先輩…」

「ええ、誰なのかは知らないけれどあの男の手の者で間違い無いでしょうね。」

俺と先輩は直ぐに警戒体制に入った。

そして、俺と先輩の前に1人の男が現れた。

 「誰だお前は!」

「俺か?俺は【クリア・ゼロ】の幹部、

[グラッジ]の1人“狂喜”のクオール。お前達を狩る者だ。」

 「長々と…煩い奴だ。」

「同感だわ。」

「おい!俺はしっかり自己紹介したんだから、お前らも名乗れ!」

「何故名乗る必要がある?お前の様な弱い奴に。」

「私も同意見よ。」

「良し、本当にお前が幹部なのか試すとしよう。」

「は?試す?必要ないだろ。自己紹介したんだから。」

「よし。やっと俺の出番か」

(さっきの奴と雰囲気が違う、誰だ?)

「お前は何者だ!」

「俺にに言っているのか?」

「そうだ!名乗れ!」

「名乗れと言われてもな…、呼び方は勝手にそっちで決めてくれ。そうだな…名乗るとすれば、獣(ビースト)か?」

「知らねえよ!まぁ、良い。俺はお前らを狩ることが出来ればそれで満足だからな。」

 「それは無理だな」

「消えた!何処だ!」

 「ここだ。」

火花はビーストと名乗った照の身体を操る者の戦い方は正に獣という感じで、本能で戦っているようだ。

 照の身体を使うそいつは照よりは弱いが今の私たちよりは間違いなく強かった。

 一部で照が“獣の化物”と呼ばれている理由を見た気がした。

「なんだよ照、もう少し遊ばせてくれよー」

(駄目だ。これ以上は約束にはない。)

「分かったよ。」

俺はもう1人の俺と今一度入れ替わった。

 「さてと、あとはコイツから情報を引き出すだけか…」

「それなら、私がするわ。」

「分かりました、任せます。俺は虫利君を探してきます。」

「分かったわ。こっちは任せて。」

「はい、頼みます。」

虫利くんは近くのカフェに他の人達と隠れていた。

 「良く、隠れてくれた。お陰でスムーズにあの男を片づけることができた。」

「いえ。僕は何もしていませんし、出来ることがここに隠れることでしたから。」

「だからこそ、偉い。それは自分の実力を理解しているということだからな。

 君は俺と先輩を結果的に助けたんだ。」

「そうよ。貴方が私達の戦闘に参加しようとしていたら間違いなく面倒になっていたわ。だから、ありがとう。」

 「さてと、少し待っていて下さい。」

頷く2人。

 俺は祖母に電話し先輩と虫利くんを連れて行っても良いか確認した。

 その結果オッケーだった。



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