第64節 ホープの“試験” (設立編30)

「ブローディア・ホープよ。宜しく。」

初対面の癒天と凍士はホープのあまりの美しさで立ったまま気絶している。

 まあ、確かに俺でも初めて顔を合わせた時は必死に気絶しないようにしていたからな。分かるぞ、2人とも。しかも、癒天の場合は彩羅とも初対面なので尚更意識を保つことが出来なかったようだ。これは致し方ないというやつだ。どちらにしても2人には少し刺激が強すぎたようだ、立ったまま気絶している上に、同時に泡も吹いている。相当なのだろうと2人を見ていると思った。

 「大丈夫なの、この2人?」

「大丈夫よ、2人とも暫くすれば意識を取り戻すと思うから。」

数分後…。

 「すみません。聞いていた以上に美しくて、気を失ってしまいました。」

「私もです。こういう人たちを“人間国宝”というのかもしれませんね…」

先輩が溜め息を吐きながら未だにホープと彩羅の美しさに当てられている癒天の額にデコピンで衝撃を与えて、正気に戻した。

 「…!ありがとうございます、火花さんやっと正気に戻れました!」

「さてと…これから俺とホープは試合をする、えっと……審判は…先輩、お願いします。」

「分かった、引き受けたわ。」

「その前にこの人たちのことを教えて!」

俺と彩羅は小声で確認を取った。

「彩羅、アイツに先輩達のこと教えてなかったのか?」

「すみません、私の視点から貴方に助けられた時のことを話していました。」

「そうか、仕方ない。今、先輩たちのことをアイツに教えてやってくれ。」

「何を話していたの?やっぱり駄目なんて今更言わないわよね?」

「勿論だ!男に二言は無い!」

「そう、なら良かったわ。貴女達のことは試合の後に教えてもらうことにしましょうか…」

先輩は俺とホープに一通り試合のルールを説明した後、武舞台に上がるよう言った。

 「火野君と闘うのは実は楽しみだったのよ」

「そうか、それは嬉しいね。それで俺に勝てると思っているのか?」

「当たり前でしょう、闘うからには勝つ。それが私の考え方であり、信条なのだから。」

 「ふむ、そうか。なら、断言してやろう。ホープ、お前は俺に勝つことは出来ない。」

 「そう?それはやってみないと分からないと思うわよ?」

「そうか。それじゃあ、さっさと始めよう。」

「2人とも話は済んだの?」

俺とホープは先輩の問いに頷いた。

 「そうか、それじゃあこれから始めるわよ。よーい…ピーッ」

「それじゃあ、私から仕掛けさせてもらうね。」

「…ッ。なんだ、血…?俺から出血させるとはやるじゃあないか、病み上がりとはいえ感心するよ。」

「何?負けた時の言い訳?格好悪いわよ…?」

 「違うね…。予言してやろう…、俺はこの試合の中で窮地に陥ることはなく、その上で君に圧勝して見せよう。」

「へえ、格好つけるね。ならそれを有言実行出来るか、試してあげるよ。」

 その後、5分間直径の2センチ程度の空気弾をくらい続けた。

 そして…。

 「誇ると良い。俺に試合で少しでも実力を発揮させたのだから…」



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