第56節 2人の経過報告 (設立編22)

8月初旬。榴が一人で俺の病室までやって来た。

 「照、来たよ。」

「珍しいな、お前が一人でここに来るなんて…」

「僕はお前達の仲間になることにした」

「本当か⁈」

「ああ、決めたよ」

「お前が仲間になってくれるのはとても心強い」

「そうか⁈あまり役に立てるとは思わないが…」

 「それじゃあ、凍士と試合はしたのか?」

「いや、まだだが…」

「なら、ちょっと待っていてくれないか?」

「退院が決まったのか!」

「まだだが、担当医の先生からは『念の為に後2〜3ヶ月は入院しましょう』と言われている。」

「じゃあ、遅くとも11月には退院出来るんだな?」

「ああ、そうだ。まぁ、定期的にここに来ないといけないだろうがな」

 「そうか。それじゃあ、凍士くんにも伝えとく」

「嗚呼、伝えておいてくれ。俺が言っていたと、しっかり言っておいてくれよ。」

 「分かっている」

そして榴は病室を出て行った。

 8月中旬、火花先輩と彩羅の2人が俺の病室に入ってきた。

 「照、お見舞いと経過報告に来たわよ」

「先輩、そんなこと言ったら台無しじゃあないですか。」

「まぁ、良いじゃないですか。照さん、どっちも私達2人がやりたいことではあるんですから…」

「ん?そうなの?」

「はい」

「じゃあ、報告してもらえますか?」

「わかっているわ。ちょっと、北海道で私が少し鍛えた子がいるの。」

「その子の名前は?」

「圧田鉱己(あつだこうき)と言っていたわ。」

「そうですか…その子の性格は?」

「良い意味で人間らしかったですね。」

「というと?」

「私と火花さんが会った時は同年代くらいの男子生徒にカツアゲに逢っていたのですが…」

「それで?」

「カツアゲから火花さんがその子を助けたのですが、その子はカツアゲをしていた不良たちにやり返さないと言ったのです!」

「確かに人間らしいな」

「ですよね」

「それでそいつは俺たちの仲間になれそうなのか?」

 「既になっている様なものよ」

「そうですか…それでそいつはいつこちらに?」

「分からないわ。けど連絡先は交換してあるから日程が決まったら連絡がある筈よ。」

 「分かりました。では連絡が来るのを気長に待つとしましょうか」

「そうね、それが良いと思うわ。」

と言ってから2人は病室を出て行った。

 3日後、今度は先輩が1人で病室にやって来た。

 「先輩、どうしました?」

「その間、言っていた子の来る日程が決まったって連絡が昨日来たわ」

 「そうですか…えっ‼️早くないですか?先輩たちが北海道に行ってから数えても10日くらいしか経っていませんよ!」

 「まぁ、それは今から説明するから」

「分かりました」

 「あの子が言うにはカツアゲしに来ていた不良たちがその子の対応に感激して下に就くって申し出てきたらしいわ」

「それで?」

「それでその元不良たちから『是非姐さんのところへ行ってください‼︎』って言われて決心がついたらしいわ」

「それで日程は?」

「今週の土曜日から5日間らしいわ」

 「分かりました。そいつがこっちに来たらここに連れてきて来れませんか?」

 「分かっているわ」

そして、先輩は病室を出て行った。

 



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