第53節 異変の経緯 (設立編19)

「分かった、僕の知る限りのことを話そう。」

 「ありがとう」

「僕がどうして脅迫なんてことをするようになったのかだったね?」

「ああ、そうだ」

「僕はある日友人と一緒に下校をしていたんだ。そして、友人と別れてからすぐ見た目は20代前半くらいの綺麗な女の人に『力をやろう』と言われて僕は断ろうとしたんだが有無を言わさず僕の体の中に何かが入ってきたんだ。何の変化もない僕を見て女の人は『成功みたいね』とボソッと呟いたんだ。」

「ちょっと待て!本当にそう呟いたのか?」

「そうだが…」

「マズイかもしれないな…」

「どういうことですか?」

「その説明は後にしよう。榴、説明を続けてくれ。」

「うん。僕は女の人から何かを与えられてから何か変わっていったみたいだ。僕自身は特に変わったとは思っていなかったんだ。けど周りからは、よく『変わった』と言われるようになったんだ。恐らく僕の場合は何か変わったという実感を感じない程にぼくの身体と与えられた力の相性が良かったんだと思う。」

「成程、実感を伴うことなく榴、君の身体と心を蝕んでいたってことか…」

「そういうことだろうね…。そして、その癒天って子を脅迫した時にはあまり僕自身の意識はなかったんだ。割合としては、8:2ってところかな。僕の意識が『2』だよ。」

「確かに、あまりお前自身の意識はなかったみたいだな。凍士の報告だとその後お前は完全に自我を失い、獣のように暴走するようになったと聞いている。」

「それで合ってると思うよ。僕は力を与えられてから暫くは友人たちも止めようとしてくれたけど、途中から諦めたみたいだ。」

「なんとなくではあるが奴等がどうやって戦力の増強を図っているのかが見えてきたぞ。ありがとう、榴、余り話したくなかっただろうに」

「いや、良いんだ。こんな事で君たちの役に立てるなら安いものさ。」

 「そうか」

「師匠、話の続きを。」

「そうだな。恐らくではあるが、奴等の組織は今の榴の話と俺と先輩が遭遇した時の女の動きから考えてあの男がトップの組織と考えて良いだろう。」

「はい」

「そして、奴等は自分たちの与えた力に適応出来る人間を選別して組織に取り込んでいると思う。」

「成程、それで選別するのが奴等の言う“実験”だと。師匠はそう言いたい訳ですね。」

 「そうだ、それにあの男の進化は最低でもあと2回はあるとかんがえ考えている。しかも進化の度に新たな能力又は基礎能力の向上が起こる筈だ。」

「確かにマズイですね…しかもトップの大幅パワーアップが最低でもあと2回はあるというのは特にまずいですね…。」


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