第37節 理想体との試合 (設立編3)

「分かった、やろう」

こうして、俺と理想体の俺との試合が決まった。

 「それじゃあ、始めようか。」

「ああ」

俺と理想体の俺は武舞台に上がり向き合った。

 「試合開始の合図はどうするんだ?」

俺の問いに対して、「簡単さ」と一言言うと武舞台の外に大きい太鼓が現れた。

 「現実の場所は日本だろ、だったら折角だし大きい楽器を合図にしよう。」

「合図は何でも良い、早くしろ。」

「そうだったね、すまん。じゃあ始めようか。」

そして、太鼓の音を合図に試合が始まった。

 俺は、理想体の俺に対して右拳に“怒”感情の力を上乗せして、脚には“哀”感情を乗せるのことで最短で距離を詰め、パンチを喰らわせようとしたが、「パシッ」と受け止められてしまった。

 今度は理想体の俺が攻めてきた。

当然だが、今の俺より強い。が、何とかなっている。と言うのも精神トレーニングと肉体トレーニングを10年以上続けたことにより、感覚が研ぎ澄まされ戦闘モードに入ると肌で空気の乱れを感知することができるようになっていた。

 「予想より強いね、もうちょっと力出しても大丈夫そうだね。」

と、理想体の俺は一言呟くと更に強くなった。

 クリーンヒットを避けることが精一杯になった。しかし、少しずつ理想体の攻撃に合わせられるようになった。

 そして…、俺は理想体の左拳での攻撃を間一発で避け、右拳にエネルギーを込めたパンチでカウンターを仕掛けた。

 クリーンヒットこそしなかったが、掠り、ほんの少しではあったが右頬から出血していた。

 「そろそろあの状態にしてなってくれないかな?」

「あの状態?何を言っているんだ⁈」

「忘れたのかい⁈あの空き地でなったじゃあないか❕」

「あの時は制御することで目一杯だったからな…教えてくれないか?」

 「黒い鎧だよ、覚えてないかな?」

「ああ、覚えていない」

 「でもまぁ、今教えた訳だしなり方は覚えているだろう?」

「分かった、やってみよう。だが、文句は言うなよ⁈」

「勿論」

俺はあの時と同様の方法であの男に抗った状態になった。

 「で、どうするんだ?このまま試合を続ければ良いのか⁈」

「ああ、もう少しだけね。」

俺は今の場所が夢なのであの時死にかけた状態になり、理想体に挑んだ。

 俺は今まで溜め込んだ感情エネルギーを両手足に込めて、理想体に攻撃を仕掛けた。

 先ず、右拳のパンチを仕掛けたが、冷や汗を掻きながら受け流した。

 次に左足の回し蹴りを喰らわせようとしたが、間一髪で避けられてしまった。

 そして、理想体との試合が終わった。

俺は息を切らしながら理想体に言った。

 「満…足…か⁇」

「うん、お陰で満足できたよ。」

「そうか、それでお前の強さはなんなんだ?」

「君が現実で使って死にかけた状態をコントロールした上で更に感情エネルギーを上乗せしているだけだけど?」

 「俺はあの状態を維持するのにかなりの精心をすり減らしたってのに…」



 


 

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