第30節 進化と賭け (少年期30)
「先輩、分かっていると思いますが逃げることは出来ません。」
「ええ、分かっているわ。だから自分で守れってことでしょ。」
「そうです。」
少女は黒いモヤが体から離れた後も意識を失ったままだ。
男は俺たちの方へ歩いて近づいてきた。
男は先ず先輩を称賛した。
「君、凄いね。彼女の能力は僕がそこで伸びている女を介して与えた物なんだ、必死に足掻いた結果といえども彼女から逃れるなんて。」
「それはどうも。けど私には皮肉にしか聞こえないわ。」
「それは残念だな」
男は先輩との会話を一通り終えると今度は気絶している少女の方に向かった。
気絶している少女の首に手で触れると男のエネルギーが上昇していくのを感じた。
どうやら少女が集めたエネルギーを吸収しているようだ。
そしてエネルギーを吸収しきったのか少女から手を離すと男の姿が変わり始めた。
男の姿は赤、黒、赤、黒と明滅している。
そして、明滅が終わり男が姿を見せると背丈は一回り大きくなり、エネルギーは倍に跳ね上がっていた。
その証拠にこの辺り数キロが震えていた。
正直先程までの男であれば俺が全力を尽くせば勝てたかも知れなかったが、今の進化した男には絶対に今のままでは勝てない。
俺もそうだが、先輩も絶望感に押しつぶされそうになっている。
しかし、ここで退いては"日常"を守ることは出来ない。
俺はここで限界を越える覚悟をした。
先ずは、"喜"と"哀"の感情を融合させて混沌融合〈カオス・アップ〉状態になった。さらにその状態で最大まで感情のエネルギーを溜め混んだ。
(おい!それ以上はやめろコントロールが効かなくなるぞ!止めろ!止めるんだ‼︎)
ともう1人の俺が危険を告げているが今限界を越えなければ負ける。確実に殺される。
(だとしてもだ、お前が持たない!)
お前は黙っていろもう1人の俺。そして理想の俺、お前も邪魔をするなよ⁈
(分かったよ、どうせ言ったところで聞かないだろうしね。せめて死なないことを祈るよ。)
そして俺は精神世界にいる2人の俺の静止を振り切った。
俺は混沌融合〈カオスアップ〉の感情エネルギーを最大まで溜め込んだ状態からさらに"怒"と"楽"の感情を加えて融合させパワーアップを図った。
「う、ウオォォォォォォ……!」
照のエネルギーが上昇する度に空気の震える範囲が広がり、最終的にその範囲は東京全域まで広がった。
そして最大までパワーをあげた照は今度はそのエネルギーを体の内に溜め込もうとした。
「ウオォォォォォォォォ!」
照はなんとか東京全体が震える程のエネルギーを抑え込むことに成功した。
(分かっていると思うが、この状態はどんなに保っても20秒が限界だその間にあの男を戦闘不能にしろ!)
ああ、分かっている。
照の赤紫の鎧は全体的に黒くなり所々に赤の線が入った物になっている。
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