第24節 紙一重そして、拡大 (少年期24)

余程嬉しかったのだろう、どれ程厳しい試合だったのかが伝わってきた。

 実際、勝敗は最後まで分からなかった。

勝敗を分けたのは相性と能力の理解度の違いからだった。

 先輩は熱エネルギーを使う事で凍士の能力を無効化することには成功していた。

 しかし、最後の攻防では"応用力の幅"が勝敗を分けた。

 先輩は凍士の攻撃を防ぐ手段が無かった、逆に凍士は無意識のうちに体に薄い氷の膜を張ったことで先輩の攻撃の威力を弱めることに成功した。

 結果、先輩は倒れ、凍士はブルブルと体全体を震わせながらではあるがなんとか武舞台に立ち勝った。

 正に、“紙一重”だった。

「火花さん、凄く強かったです。次も勝てるように精一杯努力します。」

「私もまだまだだったみたいね。勉強になったわ、ありがとう。次は勝ってみせるわ。」 と2人は互いに讃え合っている。

「先輩、どうですか?自分の能力はよく理解できましたか?」

「ええ、凍士くんと戦ってよく理解できたわ。」

「それなら良かったです。」

「因みに師匠は僕の一段階以上上ですよ。」

「そうなの?」

「どうでしょう、凍士も強くなっていますからね。最初こそそうだったかも知れませんが、今は分かりません。」

「まあとにかく、今日はありがとう。」

「こちらこそ」

「凍士くんもありがとう。」

「こちらこそです、勉強になりました。」

 黒鉄さんと共に先輩は帰って行った。

1週間後。

《町田市で起きていた中学男子連続殺人事件は拡大しているようです。》

どういうことだ?ここ最近そんなニュース聞かなかったのに…

《一週間程前から町田市以外でも同様の被害が起きているようです。警察は町田市で中学生男子を撲殺していた犯人が主導しての組織的な犯行であるとみて捜査しています。》

 他の地域でもか…。さらに酷くなるとは思わなかった。

《ここで新しい情報が入って来ました。町田市で起きている事件と他地域で起きている同様の事件は繋がっているとのことです。都民の皆様犯人グループやその一人に遭遇しても決して慌てず落ち着いた行動を心がけて下さい。》

繋がりがあるのか俺も警戒しないとな…

 2週間後、俺と先輩は家が近かったこともあり、2人で学校から帰るようになっていた。いつもの様にコンビニ近くの十字路で別れた。

 1週間後、制服は夏服に変わっていた。

  家に帰るとポストに手紙が投函してあった。

 内容は…

(お前が仲良くしている火花は私たちが預かっている、助けたければあんた一人で前回私たちをぶちのめしてくれた場所に来い!来なければ預かっている火花はどうなるか分かっているよな⁈)という脅迫文が届いていた。

 勿論制服から着替えてポロシャツと短パンという格好をしている。

 指定された場所に向かうと、前回と同じく百合を含めた20人が待っていた。

 

 

       





 

 

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