第12節 御礼と確認 (少年期12)

「そういうことですか…」

 「じゃあ、使ってくれるのね。」

「はい、それにしてもなんで俺がトレーニングしていることを知っているんですか?」

 「なんでって…私も現場にいたのよ。それに、あの技はあの程度の副作用で済まない、そうでしょう?」

 「はい、最初は10秒使っただけで今回と同様の副作用でした。」

「やっぱり!私のあげた制服を使えば、学校と登下校中も常に鍛えられるのよ!」

「明日から早速使わせていただきます‼︎‼︎」

 「そう、良かったわ。」

俺と火花先輩は一緒に登校した。

 「先輩は綺麗ですよね。」

「当たり前でしょ、身嗜みには気を使っているんだから。」

「…」

「なによ」

「いや、稀に先輩がマスコットみたいに可愛く見えるんですよ。」

「わたしをバカにしているの…?(圧)」

「いいえ!そんなことは‼︎」

俺は咄嗟に否定する。

 どうやら先輩の気に触ったようだ。

「貴方って、天然よね。」

 「そうですか?」

学校が近づくにつれ周りが俺たちを見るなり、こそこそと小さな声で話している。

 そんなに珍しい光景なのだろうか?

しかし、俺と先輩は気にすることなく会話を続ける。

 「何、自覚してないの?」

「初めて言われました。」

 「そう…」

「一応聞いておきますけど、変更は必要ですか?」

「必要ないわ。」

 「分かりました」


そして、学校に着いた。

 この日の授業は座学だった。

俺はこういった平穏もその裏にある酷い仕打ちもその両方を知っている。

 だからこそ、この平穏が尊いのだ。

終礼も終わり、火花先輩を待っていた。

 先輩は友人2人と俺のいる下駄箱に降りてきた。

 「あなた、火花の彼氏?」

先輩の友人は俺に問いかけてきた。

 俺は、キッパリと否定する。

「友人であって、そういう関係ではありません。」

先輩の友人はなんだか残念そうな顔をしている。

 「俺は、火花先輩に用があるのでここで待っていただけです。」

 「そうなの?」と先輩の友人は確認してきた。

 俺は、頷く。

先輩の友人はもう1人の友人と共に「私たちは邪魔そうね」と帰って行った。

 

「私に何の用なの?」

 「朝の話の続きです。」

「そう、なら帰りながらで良いでしょ。」

 「はい」

「顔合わせの話よね?」

 俺は、スクショし、コピーした地図アプリの画像を指差して、「はい、場所はここなのですが…」と言った。

 「家から意外と近いじゃない」

「迎えは必要ですか?」

「必要ないわ、直接行くから。」

「そうですか…、分かりました。」

 その後は互いの学校生活など他愛のない話で時間は過ぎて行った。

 「じゃあ、わたしはこっちだから。」

「さよなら。」

俺と先輩はコンビニ近くの十字路で別れ、それぞれの帰路に着いた。





 

 

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