第10節 救済と本気 (少年期10)

男子生徒は、はぁと小さく溜め息をついてから仕方ないなといった様子で、

 「俺は、これからアンタたち全員倒します。」と再び堂々と宣言したのだ。

 (この時、女子生徒は男子生徒のことを思わず、カッコいいと思った。)

 不良少女たちのリーダーぽい女生徒が男子生徒に問いかけてきた。

 「あんた、なかなか肝が据わってるじゃないか。あたしは百合ってんだ、あんたは?」

「俺か?お前たちのような弱者をいじめることでしか自分を表現することのできない人間のゴミに名乗る名などない。」

 百合と名乗った不良少女たちのリーダーが、「残念だ。」と一言呟いた。

 男子生徒は、不良少女たち20人を前に「俺は、あんたたちのような既に意思のなくなった、相手をさらに追い詰める人間のゴミ相手には、一切容赦せず本気で潰すと決めているんだ。」と言った上でさらに続ける「俺は、女が相手だろうと手は抜かない、つ本気の俺を相手に生きて帰れるかな?」と煽ったのだ。

 (この時、女子生徒の記憶に強烈なインパクトを残すため、自分の記憶に少しでも強く残す為に、敢えて煽ったのだ。)

 「あ、あたしらのことをとことん舐めやがって…‼︎お前たち!このヒーロー気取りのクソ野郎を徹底的にボコボコにしてやろうじゃないか‼︎‼︎」という百合の言葉を合図に20人全員が連携して襲いかかってきた。

 人間のゴミとはいえ、それなりに結束力はあるようだ。

 女子生徒は、もういいです。もう逃げてくださいと思っていた。

 しかし、女子生徒のその心配は杞憂に終わることになる。

 女子生徒の耳に「キィィィィィィィィン」という聞いたことのない音が聞こえた。

 すると、男子生徒の眼が金色になっている。そして、なにやらボソっと呟くと、今度は「ブン、ブン、ブブン、ブン…。」という異様な音の後、不良少女たちや女子生徒の目には薄紅の鎧を男子生徒が纏っているように見えた。

 その鎧は、兜が象・上半身が虎・下半身が熊の形をしていた。

 そこからは、あっという間だった。

連携している20人の不良少女全員を言葉通り全員を倒して見せた正に有言実行である。

 それも、1分経たないほどの時間で倒したのだ。

男子生徒がこちらに近づいて来る。感謝と同時に恐怖も感じたのだ。

 しかし、よくみるとかなり息を切らしているし、すり足だが不良少女たちから受けたダメージのようなものは見られなかったため、先ほどの姿の副作用のようだ。

 男子生徒は、自分に問いかけてきた。

「名前を教えていただけますか?」

「霞火花(かすみ ほのか)と言います。今年で14歳になります。」

「俺は、火野照(ひのしょう)といいます。今年で13歳になります。」

 「ということは、新入生?」

「そうですね。」

ここで、火花が申し訳無さそうに口を開いた。

 「助けてもらったのにこんな格好でごめんね…(汗)」

「そう思うなら早く、ブレザーとスカートを着てください、火花先輩。」

照に言われて慌ててブレザーとスカートを着る火花。

 「今日は、本当にありがとう。」

「いいえ、当たり前のことをしただけですから。」


 

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