第9節 絶望と意思 (少年期9)

傍から見れば、かなり酷い状況だったことだろう。複数の不良少女たちが1人の女子生徒に暴行を加えているのだから。しかも、それが行われていたのが、公園の花壇の近くだったことにより、人の目につきやすい場所で行われていたということがわかるだろう。目についた人を見る度に女子生徒は助けてもらえるのではという希望を持っていたが、誰1人として助けに入ろうととはしなかった。

 その事実がより女子生徒を絶望へと追い詰め、女子生徒は自殺を考える程に追い詰められた。

 無論、誰もが女子生徒の状態がかなり酷いということは分かっていたが、ネットの普及によって個人情報の特定が容易になった現代社会において、助けに入れば今度は自分がやられるのではという恐怖が目に止まった人々はその場をスルーするという行動に移していたのである。

 百合が、女子生徒に「スパッツを脱げ」と言ってきた。

しかし、女子生徒はスパッツを脱がなかったいや、投げなかったのである絶望のあまり体を一切動かすことができなかったのだ。

 百合は、一向にスパッツを脱ごうとしない女子生徒を見て取り巻きに何やら合図を送り、取り巻きが鞄の中を漁り始める。

 すると、鋏を持った取り巻きが由里に鋏を渡した。

 鋏を持つなり、百合はスパッツの右の一番下から鋏でゆっくりと切って行った。

 パサ…という小さな音と共にブレザー意外の上半身の制服とパンツという状態になったのだか、女子生徒は絶叫も上げられない程にまで絶望に染まった。

そこに、1人の男子生徒が通りかかった。

 女子生徒は、「他の人と同じように見てみぬふりをするんだろう」と絶望と諦めに染まった表情で男子生徒を見た。

 しかし、男子生徒は見てみぬふりをするどころか、自分の方へと近づいて来たのだ。この時、初めて男子生徒は自分の意思で人助けをしようとした。これまでも人助けをしたことはある。しかし、その全ては気まぐれ二次助けただけであり自分の意思で助けようとしたことはなかった。

 そして、「助けて欲しいですか、お嬢さん?」と男子生徒は自分に問いかけて来た。

 女子生徒は、「こんなチャンス二度とないかもしれない…」と思い、啜り泣きながら、「た、助けて、助けて下さい…お願い、します……。」と男子生徒に返した。

 「分かりました」とアッサリと男子生徒はそれを了承したのだ。

 男子生徒は、女子生徒をいじめていた不良少女たちに対して「俺は、これからアンタたち全員倒します。」そう宣言したのだ。

 不良少女たちのリーダーぽい女生徒が、

声を荒げて、「女子の前だからってカッコつけてんのか?こっちは、20人だぞ‼︎この人数を前にもう一度同じこと言ってみやがれ‼︎‼︎」と言い放った。

男子生徒は、はぁと小さく溜め息をついてから仕方ないなといった様子で、

「俺は、これからアンタたち全員倒します。」と再び堂々と宣言したのだ。

(この時、女子生徒は男子生徒のことを思わず、カッコいいと思った。)

 








 

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