『異世界老夫婦』一日に一時間だけ最強の全盛期に戻れる力を利用し魔王を倒せ!!

望米

第1話

 異世界ニューワールド。

 此処にはかつて日本という国から勇者として呼び出されたカップルが居た。

 男は聖剣創造、神体強化という未知のスキルを、女は魔導女王という最高峰のスキルを。


 二人は多くの旅を重ね、十年後彼らは対峙した。

 この世界を恐怖に陥れる悪の象徴。

 勇者として召喚された目的である魔王に。


 圧倒的な力の差を見せつけ、魔王に勝利した二人だったが。

 魔王を倒すことによって発動する呪いを浴びた二人は、不老というスキルを失った。

 勇者の二人は寿命が長く五百年ほどだとされているが、まるで浦島太郎の物語のように彼らはその日から年老いた老人となってしまった。

 しかし一日に一時間だけ、全盛期の姿に戻れる二人は四百五十年たった今でも世界を守り続けている。


「ばぁさんや……そこのせんべいを儂にとってくれませんかな」

「……はぁ?」

「そこのせんべいをとってくれませんかな」

「……はぁ?」

「しょうがない、わしがじぶんでとります」

「……はぁ?なんだいじいさんや晩御飯はまだじゃぞ」

「そんなことは一言も言ってませんぞばぁさんや」


 前回から三回ほど復活した魔王を討伐してきた二人。

 だが魔王は、再度復活し世界を混沌で満たそうとしている。

 年齢的にも今回で最後の二人は、ギルド本部と連動して冒険者養成所で剣術や魔法の指南役もしている。


「い◯ともはまだかいじいさんや」

「なにをいうとるんじゃ、ばあさんや。い◯ともは終わったしそもそも此処は異世界ですぞ」


 他の転生者や転移者によって地球の科学の技術もこの世界には存在している。


『おひるやーすみは』

「お、おぉ始まりましたよおじいさん」

「……。」


 この世界に存在しているはずがない番組を目の当たりにして、言葉を詰まらせるじいさんだったが、せんべいをとると再び定位置にもどる。


「ふぅ……平和じゃのぅ……」

「そうですねぇ」

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