第1話 ハジまり

...ダメだ。思い出せない。

俺は何だ?名前は?性格は?俺の家族はどこにいる?

「...はあ」

もうこれ以上は意味がないと判断した俺は、とりあえず街をぶらぶらすることにした。俺自身今は何故か吸血鬼になってるし、まあ大丈夫だろ。

そんなこんなで俺は部屋を出て靴を履こうとすると、リビング?のところに何か紙が置いてあるのに気づいた。

なんだ?と思い覗くと、紙には「あっためておいたから早めに食べておくこと。茶碗は自分で洗いなさい。一緒にいれなくてごめんなさいね 母」と

書いてあった。

「はっ...」

思わず笑ってしまった。別にバカにしたりしてるわけじゃないぞ???

ただ...なんかこう、温かいなあって。

「吸血鬼も人間も対して変わらないじゃないか...」

ふと、そんなことを思うのだった。

.....ん?

なんで俺は今人間と吸血鬼を比べた?

まあ、いいか。とりあえず俺の母(この世界では)が作ってくれたらしいので有難く頂くとしよう。

「んじゃ、頂きま──」

と、俺が食べようとした時だった。

「ッ!?」

突如、玄関の方面からとてつもない音が響いたので驚いてしまう。な、なんなんだあ一体!?

戸惑いつつも玄関の方に向か

「動くな」

その瞬間、背筋が凍った。いやまじで動かないんですけど。

俺はなんとか動こうとしたのだが、

「おい、だから動くなって言ってんだよ殺すぞ」

やめて殺さないで俺まだこの世界のことなんも分からないんですぅ。

なんて情けないことを思っていたらなんか動けるようになってきた。いやマジでなんなんだこれ?

とりあえず...吸血鬼の弱点ってなんだったっけ?...心臓?

潰すか。

「はーいストップストップ!」

「うぼあっ!?」

その瞬間、背中にえげつない衝撃を受け思わず吹っ飛んでしまった。

吹っ飛ぶ途中に見えたのだが...女性の吸血鬼か?あれは。

「いってえ...」

「はい、確保!署まで来てもらいますよ!」

すると女吸血鬼は大きな声でそう言い身柄を拘束していた。俺を。

「...いやいやいやいや!俺じゃないだろ普通に考えてっ!別のやつ!」

「へっ?」

なにをどう見たら俺が犯人に見えるんだよ!思いっきりやられかけてたよ!

「あ、いた!確保!署まで以下略!」

「略すんじゃねえ」

な、なんなんだこいつ。

「おーい...ってなにやってんだおまえ!」

すると今度は玄関の方から男がやってきた。一体なんなんだよ...こんなに次から次から。

「あの〜...いい加減なにが起こってんのか教えて頂きたいんですけど...」

俺は一応敬語で話した。見た感じ警察のような見た目だしな。

つかここ俺の家なんだが?俺に何かしようとしてきたやつよりもこいつらの方が家破壊してきてるんだが?

「あぁ、すまんすまん」

すると男は軽く咳払いをし、続けた。

「実は最近強盗事件が多発していてな。こいつが恐らく主犯格だ」

思ってた以上にヤバい話だったんだが???

「まあそれでな、クロヱ...こいつが急に『アレ犯人じゃないか』とか言い始めて走ってったんだわ。いやほんと、この度はうちのクロヱが...」

「いやいや、別にいいじゃないですか犯人捕まえっぐええ!?」

「いいから頭下げやがれこの野郎!

みろ!お前のせいで家がこんなことになってしまったんだぞ!」

そう言っていたので俺も思わず見渡したが...うん。かなしいかな。

「いやあ...でも犯人捕まえるためには必要だったし...」

「給料下げるぞ」

「申し訳ございませんでしたあああ」



あのあとまあ色々あって家の件は大丈夫になった。はあ...マジで大変だった。なんかよくわからんまま事が進んで言ったような気がするしな。

だが、この時の俺は知る由もなかった。この騒動で終わりじゃないということを。むしろ、全ての始まりだということを。

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