執筆一

 先生との出会いは私にとって不幸以外何者でもなかったです。今でも思います。あのとき死んでいたらどれ程楽だったのだろうか、と。先生は私に生きる理由をたくさん教えてくれましたが、後悔を全て払拭するほどのものではなかったかもしれません。ここで「かもしれない」という書き方をするのは私は残念ながら途中で投げ出さないかぎりまだ人生が長く、その上教わりきる前に先生がいなくなってしまったからです。だから私はこうして怨み節を綴りながらも、一応は最後までやりとげてみようと思います。それが先生が私にくれた生きる理由であり、私が先生に返せる恩だと信じていますから。

 恩返しでふと思い出しましたが、ご馳走になったカフェ代、ちっとも返していませんでしたね。まああれは半ば先生のせいなので許してください。あと、これは今さらかもしれませんし、私がいうのもなんですが、見ず知らずの女子中学生と二人きりで食事をすることはあまり推奨できません。なにかあったときにどう転んでも角が立ちます。まあそれを理解した上で結局あのように手を差し出すのが先生で、それを理解した上で差し出された手に甘えてしまうのが私なのでしょうが。まあとにかく、あの日が私と、そして先生にとっても大きな機転であったことは間違いないでしょう。それが嬉しいと思う反面、失敗だったとも思います。先生は、どっちだと思いますか。それとも、どっちもとか、どっちでもないとかいって、笑うんですか。まあそれを知る術は恒久に失われてしまって、私がここでなにを議論しようと無意味ではあるのですが。結局私が言いたいのは、先生と私の時間は二人にとって人生観を変えるほどの価値はなくて、でも確実にお互いの人生を変えるほどの価値はあったということです。自分でもよくわかってないことをこうして言葉に書き記すのは難しいですね。とにかく、何度でも言いますが、先生との出会いは私にとって不幸でした。不幸で、そしてかけがえのないものでした。不幸とは今も思っていますが、幸運とも思っています。どちらが大きいのかは、私の今後の人生でゆっくり考えてみたいと思います。

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