25歳

次にあった時、彼女は鏡の前で座って涙をながしていたの。

かわいいワンピースやかっこいいズボンじゃなくて、真っ黒のドレスを着ていたわ。

この服を着ている彼女は久しぶりにみたけど、前もこうして泣いていたからきっと、悲しい気持ちの時は黒い服を着る決まりなんでしょうね。

「また泣いているの?私に何があったか話してくれない?」

そしたら彼女はとってもビックリした顔をしていたわ。

「シャルロット……シャルなの?」

「えぇ、そうよ。あなたの友達のシャルよ」

立ち上がった彼女は前よりも少しだけ背が伸びていて、もう私が顔を上にあげないと目を見て話せなくなっていたの。

きれいな目には涙がいっぱいたまっていて、手でふいてもなくならないみたい。

「まだ友達でいてくれたのね」

「もちろんよ」

「あのね、お祖母様が亡くなったの。少し不思議な方だったけれど、私の髪を褒めてくれたとてもお優しい方だったわ。もう誰も私を必要としてくれる人はいないの……」

「そうだったのね……亡くなった方とはもうお話ができないのよね。とっても悲しいわ」

彼女は涙を流し続けていて、それを見た私もなんだかとっても悲しい気持ちになったわ。

その時に、私はずっと前に彼女に教わった悲しい気持ちをなくす魔法を思い出したの。

記憶を無くす前に教えてくれた、魔法が使えない私でも使える魔法よ。

「マリー、あなたは私の生きる希望だわ」

「えっ?」

「あなたが昔私に言ってくれた言葉よ。覚えてるかしら?あなたが学校でイジメられていた時に、私はなにもできなかったの。それがイヤで泣いてしまった時に、あなたが私に言ってくれたのよ」

その時の彼女は、黒くてキレイな髪の毛を学校の人に切られてしまって泣いていたのよ。

私は自分の髪が切られるよりも悲しかったわ。

どうにかして鏡から彼女の方へ行こうとしたのだけど、結局何も出来なくて私も泣いてしまったの。

その時に彼女は私に魔法をかけてくれた。

その言葉を聞いたら、なんだかぽかぽかして温かい気持ちになれたわ。

私でもきっとこの魔法はつかえる。

「あなたはいつも私をおどろかせてくれるわ。大きくなったり小さくなったり、色んな服を見せてくれたり、あなたの魔法は不思議なものばかり!マリー、あなたがいてくれるから毎日が本当に楽しいのよ!」

私は彼女にも温かい気持ちになって欲しくて、がんばって魔法をつかったの。

やっぱり私にも魔法はつかえたみたい!

彼女はまだ泣いていたけど、顔は笑顔になっていたわ。

「シャル……あなただったのね、マリーお祖母様のお友達というのは」

「あら、マリーはあなたのことでしょう?」

「えぇ、えぇそうよ、私はルナ・マリー・フローレス。シャルのおかげでお祖母様の口癖を思い出せたわ」

「私の魔法はあなたに使えたかしら?」

「もちろんよ。本当にありがとう」

そう言って彼女は鏡から離れようとしていたの。

「もう行ってしまうの?」

「ごめんなさい、でもあなたのおかげでしなくてはいけないことを思い出せたわ」

ちょっとだけ寂しくて、もう少し話していたかったのだけれど、彼女は前から決めたことは絶対にやる人だったから、

「わかったわ、私はいつでもここにいるから。がんばってね」

そう言って手を振ったの。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る