第6話
全身がビリビリして体が自由に動けない。
巨大猿が持つ巨大棒に微かに雷のようなものが見えたから、それによる麻痺のようだ。
殴られながらも僕の攻撃が届けば劇毒を与え続けることができる。劇毒部位が増えれば増えるほど与えるダメージも増えるというのに……これじゃ……接近することすらできなくなった。
どうして世界はこんなにも理不尽だらけなのか…………。
やっと……やっと妹を救う力を手に入れたというのに、ここで死んだら……誰が結月を……。
――――諦めてたまるか!
こんな理不尽……今まで何度もあった! 母さんが僕を捨てて家を出たあのときだって……理不尽だと思っていても、妹が魔欠症に倒れたときだって……何とか理不尽に抗ってきた!
初めてFランクゲートに挑戦したときだって、周りからバカにされても自分にできることを見出して探索者を続けられて、ここまでやってきた。
こんなところで……諦めるなんてできるはずもない!
――――【スキル『降臨』使用時間が一定時間を経過したため、魂状態が解放されました。】
――――【魂レベル1に到達。ユニークスキル『降臨合体』を獲得しました。】
――――【ユニークスキル『降臨合体』を使用し、魂『アビスモンキー』を追加解放しますか?(Y/N)】
何でもいい……! この理不尽を断ち切れる力があるなら、僕は……悪魔にだって魂を売ってやる!
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【ステータス】
ジョブ:クラウン(アビスモンキー&デッドリースコーピオン)
レベル:降臨による停止
魔 力:0/7
力 :380+640
俊 敏:1400+890
頑 丈:400+1000
耐 性:400+1000
運 :500+1
【特殊能力】
・暗視
・方向感覚
・暗化
・劇毒
・頑丈以下ダメージ無効
・瞬撃
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今まで感じたこともない力を感じる。
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残り時間:97秒
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残り時間は一分半……だがそれで十分だ!
合計2290になった俊敏のおかげなのか、巨大猿が止まっているように見える。
僕に目掛けて振り下ろされる巨大棒を交わしながら飛ぶ込み、腕に連続攻撃を与える。
「ぎゃあああああ!」
痛みを感じているのか咆哮を上げるが、風圧にも僕の身体は吹き飛ばされない。
止まるな……! 止まっちゃだめだ! このまま畳みかけろ! 世界の全ての理不尽を断ち切るように、目の前の巨大な敵も粉砕して前に進め!
今でも待っている結月のために、兄として、閉じた世界を切り開くんだ!
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残り時間:15秒
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巨大猿が全身に雷をまとわせて、空高く飛び上がった。
それが……お前の最後の一撃か!
勢いよく落ちてきた巨大猿の強烈な打撃が地面を叩き、周囲に凄まじい雷を放つ。
「ぐあああああ!
痛い――――だが、それがどうした!
ここでお前を倒せなかったら、僕は先に進めない。負けるわけにはいかない!
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残り時間:9秒
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「結月を救うために……!」
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残り時間:7秒
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「お前を……!」
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残り時間:5秒
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「打ち砕くんだあああああああ!」
僕の最後の一撃が、巨大猿の胸を貫く。
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残り時間:2秒
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周囲に鳴り響いていた雷が止む。
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残り時間:1秒
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巨体が前に倒れた。
それと同時に僕の体を覆っていた黒い外套が消えて、体が重くなる。
けれど、今の僕はとても清々しい気持ちだ。
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アビスゲート内のフロアボス討伐を確認。
アビスポイント100を獲得しました。
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アビスポイント……? それよりも……倒せたのかっ……。
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【魂リスト】
・ユニークスキル:降臨、降臨合体
①デッドリースコーピオン(C)
②アビスモンキー(C)
③アビスキングモンキー(C+)
④空
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全身の打撲や火傷がヒリヒリする。
生き残れた……これで結月を助けることができるかもしれない……! ううん。絶対に救う! 僕はそのためにここにいて、生き残ったんだから!
どんな世界の理不尽が起きても……絶対に断ち切る。
「僕…………いや。もう弱気な僕は死んだ。これからは結月を救うために、ただ前を向いて歩く強い男になる。これからは――――全ての理不尽を
そして、俺は――――手を伸ばしてゲートに触れた。
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