第4話
朧気に覚えているのは、辛そうにしている母さんの顔。言葉も話せなかった頃からあの男は僕や母さんに暴力をふるっていた。
それから何があったのかはわからない。でも気付けば男はいなくなり、母さんと二人で小さな部屋にいた。
母さんは毎日のように泣いていたけれど、それも気が付くと今のお義父さんと小さな女の子が一緒にいるようになった。
最初はとても楽しかった。お父さんも今のような……酷い人ではなかった。それなのに…………数年後から家にずっといるようになり、荒れ始めた。
それからさらに数年後……僕が八歳、妹が七歳のときに…………。
――――母さんは僕を捨てて、家からいなくなった。
「っ!?」
目を開けると、周囲は真っ暗だが、遠くに木々が見える。さらに、遠くに霞んでいるが城のようなものも見える。
ゆっくり体を起こして現状を確認する。
僕の記憶が正しければ、サソリ型モンスターと戦って……ぼろぼろになったが、ユニークジョブが開花して戦ったことまでは覚えている。
夢中で戦って……フロアボスが倒されてゲート内が崩壊して……中に残されたままで逃げられなかった。
今の僕は生き残れているのか……?
まず、周りの気配からモンスターの気配はしない。ひとまず、今の現状をチェックだ。
ウィンドウを発動させる。
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【ステータス】
ジョブ:クラウン
レベル:10
魔 力:6/7
力 :1
俊 敏:1
頑 丈:1
耐 性:1
運 :1
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【スキル】
・吸魂
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【魂リスト】
・ユニークスキル:降臨
①デッドリースコーピオン(C)
②空
③空
④空
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あれだけモンスターを倒したのにレベルは10のまま……?
さらに今まで空欄だったスキル欄に新しいスキル『吸魂』が現れた。さらに『魂リスト』というもののウィンドウが新しく現れた。
気を失う前に魂を自分に降臨させることで力を発揮できている。魔力が1減っていることから、ユニークスキル『降臨』もしくは、スキル『吸魂』を使ったときに1減る仕様か。
それと減ったままだから、まだ一日は経過していないってこともわかる。魔力は0時になると回復するから。
ひとまず、新しい力が目覚めたのはありがたい……あとはここからどうやって出るか。
Cランクゲート内なら僕ではとても太刀打ちできない。けれど、あのとき……新しい力を使ったらデッドリースコーピオンとやらを余裕で倒せていた。
ちょっと試してみる。
あのときの感覚は何となく掴んでいる。
「――――スキル『降臨』発動! デッドリースコーピオン」
僕の前に拳サイズの丸いものが現れて、中にデッドリースコーピオンが描かれている。
それを握りしめると、体の内側から凄まじい力を感じる。
体を覆う黒い服とフードが現れた。
さっきは夢中だったけど、こういう風に変わってたんだな。
このままだと誰かに正体がバレるなんてないか?
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【ステータス】
ジョブ:クラウン(デッドリースコーピオン)
レベル:降臨による停止
魔 力:5/7
力 :640
俊 敏:890
頑 丈:1000
耐 性:1000
運 :1
【特殊能力】
・劇毒
・頑丈以下ダメージ無効
・瞬撃
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ステータスが変化した!? それにレベルが停止……? 魔力は1だけ減った。これはスキル『吸魂』じゃなくて、ユニークスキル『降臨』で使うんだな。
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残り時間:180秒
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残り時間!?
それから1秒ごとに減っていく。
時限式スキルだったのか……。
確か僕は使えないけど、身体能力を上昇させるスキルは一定の魔力を使って一定時間身体能力を強化するものがあるという。それと同じタイプだと考えればいいか。
それにしても180秒って……たった三分しかないのか。
僕の魔力は7。二十分弱しかこの状態になれない……と思うと、使いどころを見極めないといけないか。
まずは今の状態で動いた方が良さそう。
全力で走ってみる。
こ、これは……‼ は、速い! ステータスが高くなるとこんなにも速くなれるのか!
三十秒程走ったところで森の中に着いたのだが、僕の周りにモンスターの姿が現れた。
身長80センチほどの猿達だが、鋭い剣のような爪に目が真っ赤に光っている。見た目以上に……強そうな気配がする。
「あまり時間がない……ここでお前達に勝てないんじゃ生きていけない……!」
猿達が一斉に飛び込んできた。
体感から猿達が僕が今まで相手してきたモンスターとは比べ物にならない強さなのがわかる。でも――――今の強さなら何とかできる!
飛んできた猿に向かって拳で突くと自分でも驚く速さで繰り出せる。これも降臨による特殊能力の効果みたいだ。
猿を次々殴り飛ばすと、殴った部位が紫色に変色しているのがわかる。
これも猛毒の効果のようだ。
猿達を倒した頃、降臨状態が解除され、元の状態に戻った。
一気に体が重くなり、感覚も鈍るのがわかる。
降臨はあと五回残されている……その間に、何とかこのゲートを脱出しないと……。
というか、脱出できるのか?
――――そのとき。
僕の前に降臨したときのように、丸い霊のようなものが現れた。
その中には、さっき倒した猿が描かれていた。
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【魂リスト】
・ユニークスキル:降臨
①デッドリースコーピオン(C)
②アビスモンキー(C)
③空
④空
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