第9話

「紹介するよ、この人がビビンバ。不思議屋料理店

の店主。ボクのご主人様でもあるんだ」

ミミが紹介したその人物は小柄で丸々と太って

まるで養豚場の豚みたいだった。

「どうも、ビビンバあるね、よろぴくーーーっ」

ビビンバはコック帽をひょこりと脱いで見せて

その見事に禿げ上がった、額を露にしたのだった。

「アナタ、三年ぶりのお客あるね。ネットで

スーパーマンになれるインゲンと卵のスープ

飲んだあるね。おいしかったか?」

「うん、とっても。本当に車が持ち上げられたんで

ビックリしちゃった。それにしても

三年間一人の客もいないの?」

「そうよ、わたしがあれやこれや口うるさいからか

客がみんな逃げてしまったみたいあるね」

「どう口うるさいの?」

「これはネズミになるけど滋養強壮に効く

とか二度と生きてはかえれないけど

とってもおいしいとか言うと途端に」

「わたし帰ります」

わたしは踵を返した。

「そんなこといわないで食べていきなよ。

せっかく来たんだからさ」

ミミが止めに入った。


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