第118話
何でも派手にやり過ぎると悪目立ちするものだ。
今回の相手はゾディ茶をばら撒き、貴族社会と商業界を牛耳ろうとしていた。
ただ、規模が大きくなればなるほど統制がきかなくなるのは組織の宿命である。
手足のように使っていた闇ギルドは、末端の組織員の軽い口を抑えることなどできないだろう。
商業界隈やその関連において、甘い汁を吸おうとする者も後を絶たない。
軍が小隊規模で指揮官を据えて統制をはかるのは、そういった不統一を避けるためである。
金鷲騎士団も似たようなものだろう。
強い組織とは、得てして高い忠誠心や方向性を共にする、小規模集団の集合体であったりするのだ。
闇ギルドの構成員や一部の商人に口を割らせることができたのは、いずれもそういった強い芯を心に持っていないからに違いない。
特殊部隊出身のソフィアが俺と同じことができなかったのは、単に貴族として守るべきものがあったことと、冒険者ギルド本部に敵勢力が入り込んでいるところにあった。
八方塞がりの状態で俺と出会ったのは彼···彼女に何か確信があったのか、単なる偶然なのかはわからない。
ただ、ソフィアは数少ない理解者であり、今後の活動においては味方になりうる存在でもある。
ならば、敵対して命を奪うよりも互いに利用しあっている方が生産的に違いない。
一般人にはわかりにくいかもしれないが、軍人とはドライな考え方をする者が多かった。
何らかの事情で命のやり取りを行った者同士でも、私怨や思想の違いがなければあとを引くことは少ないのである。
ソフィアと俺の関係性もそうなるだろう。
彼女は今、カレンの監視下にいる。
もちろん、本部には拘束していることを報告していない。
体裁上は任務遂行のためにギルドを拠点に活動していることになっている。
念の為、身柄はギルドにある客室で軟禁状態だが、それは本人の了承を得てのことだった。
ソフィアが出張先で成果の上がることのない活動中に、俺が素因の解決をはかることになったのである。
素因とはゾディ茶の卸元、そしてそいつが構築したグループの壊滅をさす。
もちろん、俺個人の力では無理難題も甚だしい。
しかし、利用できるものは数多くある。
俺のモットーは、毒は毒を持って制す。
金鷲騎士団やその指揮官、場合によっては有力貴族の権威を利用することも辞さない。
注意すべきは激流に敵を突き落とす場合、自身も巻き込まれないことである。
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