第117話

闇ギルドの方は予想以上に混乱しているようだ。


金鷲騎士団の誘致は効果的だったが、少々アクが強すぎた気もする。


あれからも武力一辺倒で押しまくり、闇ギルドの末端メンバーまで捜索して拷問にかけていると聞く。


騎士団の長が頭の上がらない人物からの指令である。


死人が山積みとなるのは予想していた。


ただ、こちらが闇ギルドに介入することはもう出来ないだろう。


奴らは壊滅に向かっている。


ゾディ茶に関する黒幕の正体を漏らそうが、プライドや友誼のために黙っていようがそうなることはほぼ確定的だ。


俺も下手に関わると何をされるかわからないほど、かの御仁は直情的で危険すぎた。


まあ、金鷲騎士団のおかげで俺は存在を隠せている。派手に暴れてもらうことで、裏社会でのさばる闇ギルドには消えてもらった方が世の中のためなのだ。


俺は俺で別の搦手を実行するためにミハエルに近づいた。


こちらは想定通り、藁にも掴む勢いで飛びついてきたといえよう。


ミハエルは美人局やハニートラップといった類に嵌められてしまったのだ。しかも、相手の女性は自分よりも位の高い貴族の妻である。ことが公になれば、不貞だけの騒ぎでは済まされないものだ。


これはミハエルの職権を利用しようとした利権に群がる蝿が画策したものである。


不貞の相手は貴族の側室であり、ある商人の妹でもあった。


その女性が総会に出席していたのは夫である法衣貴族の名代としての立場からだったのだが、実の兄が商業ギルドの理事に名を連ねていることからも、きな臭いものが見え隠れしている。


ミハエルとて無能ではない。


ただ、一年以上も顔を突合せて、その度に商業や経済の発展においての忌憚のない意見を取り交わす有能な女性を演じていた相手に、信頼と憧憬を抱いていたのだ。


そこに男性としての想いがあったかどうかは知らない。


ただ、ゾディ茶を飲まされ、その先にそういった衝動に突き動かされたことで操り人形のようにされてしまったのである。


本来、ミハエルの将来になど関心はない。


しかし、ミハエルを利用しようとした商人は、今回の一連の黒幕に通じているのである。


その黒幕を引きずり出すためには、こういったまわりくどいことをするしかなさそうだったのだ。


ただし、その後の調査でミハエルを嵌めた商人が、黒幕にとって大手のスポンサーであることが判明していた。


相互に情報や資金提供を行いながら、裏で悪事に手を染めているのだから潰しておくことが世のためだろう。



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