第112話
正面に三騎、裏口に二騎。
現場に到着した騎士たちは、隊長格の男に指示を受けて迅速な展開を見せた。
口頭ではなく指の動きによるサインで指示している姿を見る限り、こういった任務にも慣れているのだろう。
この世界の騎士とは、戦争時に騎乗して戦う者たちをいう。
ただ、平時に関しては様々な役職や任務を与えられてそれぞれの管轄で活動するため、その概要は一言で説明できるものではなかった。
おそらく目の前の騎士たちは王族や貴族のお抱えで、主君に叛意を唱えるものたちを武力で粛清するような任を負っている類ではないかと思える。
俺が監視していた位置から蹄音は聞こえていたが、建物に対しては風下、しかも窓などの位置から死角となる方角から接近していた。これは建物内にいる者たちに自らの存在の認知を遅らせるためである。
さらに現場に到着してからの行動についても一切の無駄がなかった。洗練された動きに彼らの日頃の職務内容を垣間見たのである。
「内部にいる者たちに告げる。ここは我ら金鷲騎士団第二特任隊が掌握した。抵抗は得策ではない。直ちに投降せよ。」
隊長格が落ち着いた声で投降を呼びかけた。
素直に聞き入れる可能性は低いだろうが、騎士たちの素性を知っていれば無抵抗で出てくるかもしれない。
金鷲騎士団というのは有名な騎士団である。
7~8年ほど前に内乱があった際に活躍し、その武力の高さは証明されていたはずだ。さらに第二特任隊というのは、わかりやすくいえば騎士団の中の特殊部隊に相当する。
具体的には凶悪犯罪への対処が主な任務なのだ。
かの御仁の私兵についてはそれなりに調べているが、その中でも金鷲騎士団の第二特任隊とは最強戦力だといって差し支えないだろう。
俺は騎士の動きを視界の端に捉えながら、建物内で奴らが動きを見せた瞬間に気配を消して移動することにした。
第二特任隊には気配察知に長けた者もいると推測し、万全の注意を払いながら死角を選んでゆっくりと身を移していく。
自らが画策したこととはいえ、現れた者たちが悪すぎた。
彼ら金鷲騎士団第二特任隊は猟犬のように鼻がきく。
密告者が近くにいること、そしてその者の確保についても想定している気がしてならなかった。すなわち、俺自身の身も今回のターゲットではないかということである。
一対一ならともかく、あの人数を相手に逃走するとなると分が悪いだろう。
彼らは機動力、そして武力において常人離れしている。いかに特殊部隊出身の俺であっても、危ない橋を渡る気にはなれなかった。
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