第106話
何名かを尋問して、判明した住所へと向かった。
ソフィアがある人物の言いなりになるしかなかった理由。
面倒で腹立たしい内容である。
戸口に立ち、ドアをノックして返事を待つ。
「誰だ?」
面倒ぐさげに声を放ってきた男に小声で答える。
「あ!?聞こえねぇんだけど?」
もう一度同じトーンで答えた。
「ちゃんとしゃべれや!?聞こえねーって、いってるだろうが!!」
怒声を浴びせながらドアの覗き窓が開く。
その横長の空間に人差し指と中指を突き入れた。
「ぐわっ!!」
覗き窓の向こうにある男の両目を潰した。
革手袋をしているので嫌な感触は軽減されている。俺とて素手で人の眼球を触りたくはない。
ドアの横に立ち、しばらく様子をうかがった。
内部では慌ただしい足音と怒声が聞こえているが、なかなか扉を開けようとする者はいない。
俺は左手に持っていた火酒の小瓶を開け、そこに布を突っ込んだ。火酒とは、その名の通り火が点くほどアルコール度数の高い酒である。燃料よりも割安なため、火炎瓶として使うことにした。
液体が布に浸透した頃合に火をつけ、そのままドアに投げる。
覗き窓から熱気が伝わったのか、中の奴らが一瞬静かになった。
燃えているドアの開閉を封じるように、傍に置いてあった樽を足で押す。中には先ほどと同じ火酒が八分目まで入っていた。
樽はあらかじめ転がして持って来たものだ。
中の火酒に燃え移れば、ボヤではなく火事に移行する。
仮に燃え移らなくても樽の重さでドアは開かないだろう。
因みに、この建物の1階にある窓はすべて雨戸が閉められていた。観音開きに開けるタイプのため、中からは開けれないよう細工済みだ。
そっと建物から離れ、近くの物陰に隠れて様子を見ることにした。
しばらくして、ドアの内側から何かを叩きつける様な音がする。
窓が開かないため、強引にドアをぶち破る策をとったのだろう。
この建物の窓は、雨戸の内側も同じ様に観音開きとなる造りである。雨戸に細工をした程度でも、中の窓は開かないようになっていた。
何度目かの衝撃と激しい音が鳴り響いたのが伝わってくる。
この辺りは郊外で、近隣に他の建物はなかった。一見するとマフィアの抗争みたいな様相になってきたが、目撃者が出る恐れも少なく邪魔は入らないだろう。
大きな破砕音と共にドアが打ち破られた。
それと同時に樽が倒れ、緩めておいた栓が抜ける。
レンガを何個か置いて樽が転がらないようにしておいたため、流れ出た火酒に燃え移り火勢が一気に強くなった。
中からひとりの男が飛び出して来たが、衣服に火がつき瞬く間に全身を炎が包んだ。
熱さでのたうち回る男に向かって投擲用のナイフを投げて息の根を止める。
別に苦しませることが目的ではないのだ。
容赦はしないが、無駄に残酷な死を与えるつもりはなかった。
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