第103話

何度か同じような人間に絡まれ、その度に叩きのめしてリーダー格を尋問した。


殴った相手の数が増えるほど、出てくる奴らの人相や言動が知的な感じになっていく。


犯罪組織にありがちな社会構造で、上の人間ほど知力も高まっていく流れだ。


日本に限らず、犯罪組織とはシノギで高い利益をあげた者ほど上に昇れる。


シノギとは反社が行う経済活動のことで、内容は多岐に渡るがその多くが違法行為であることが多い。


シノギに違法行為が多いのはそれだけ儲けやすいからというのが理由だが、現在追っている案件はかなり悪辣なものだった。


この世界でも茶葉の需要は高い。


王族や貴族の嗜みとして、様々なブランドが愛飲されている。


もちろん、それらはすべて別の原料というわけではなく、数種類の茶葉をブレンドしたり異なる製法にて編み出されたものだ。


近隣地域で飲まれているものはいずれも紅茶で、その種類は大きくわけて3つ存在した。


簡単にいえば、元の世界でいうインドのダージリン、スリランカのウバ、中国のキーマンといった世界三代紅茶に風味が似ているものである。


その紅茶に、近年になって新たなブランドが生まれた。


ゾディ茶と呼ばれるフレーバーティーがそれである。


フレーバーティーとはフルーツや花、香料などで香りづけされたもので、その名の通り茶葉の香りを楽しむものだ。


わかりやすい例でいうと、ジャスミンティーがそうである。


ジャスミンティーは、緑茶にジャスミンの花の香りづけをしたフレーバーティーに分類される。


それ以外にも代表的なものでいうと、ベルガモットという柑橘類で香りづけしたアールグレイ、松の葉の燻煙で茶葉を乾燥させたラプサンスーチョンなどがあるが、こちらの世界では最近までフレーバーティーというものは存在しなかった。


ゾディ茶はゾディと呼ばれる花で香りづけされたもので、甘い香りがするそうだ。実際に飲んだ者から聞いた話では、アップルティーのような風味が一番近いものであるらしい。


もちろん、アップルティーはこの世界に存在しないため、似たような別の果物の香りが近かったことからの結論であった。


当然、人気の出そうな紅茶である。


1年ほど前から市場に出回り、貴族を中心とした金持ち連中を相手に高値で取引されているらしい。


ただ、それだけなら別にどうという話ではない。


問題なのは、そのゾディ茶が普通のお茶ではないことにあった。




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