第24話
「何よ、あれ!?」
「中に硫黄が入っている。煙は吸うなよ。」
硫黄を燃やすと青い炎が出て刺激臭のある二酸化硫黄が排出される。湿った空気で発煙しやすいのが特徴なため、こういった洞窟内などで高い効果を発揮する。
二酸化硫黄は呼吸器系にダメージを与えるため、魔物を牽制するのに使い勝手がいい。
もちろん、何も考えずに洞窟の中で燃やすのは危険だ。今回のものはそれほどの量の硫黄を仕込んでいないし、空気の流れを読んで使えば外まで走る分には被害は受けないだろう。
しばらく洞窟を駆け抜けると外へと出ることができた。
ミューフは息を弾ませながら、そこで三人の冒険者が倒れているのを見つける。
「あなたがやったの?」
「ああ、こいつらは人拐いの一味だから捕まえに来た。おまえらを助けたのはついでだ。」
アドルと顔を見合せてどう対処すべきか考える。
「あんたは何者なんだ?」
「冒険者だ。」
「冒険者が冒険者を捕まえるということ?」
「冒険者といってもこいつらは犯罪者だからな。」
ミューフは突然のことで少し混乱していたが、アドルは冷静に言葉を選んで目の前の男に質問を始めた。
「そいつらが悪い奴らだということはわかった。だけど、俺たちが拐われるのでなく殺されそうになったのはなぜなんだ?」
「人を拐った罪を余所者に押しつけるためだ。おまえらはバルドル人だからスケープゴートにちょうどいいと思ったんだろう。」
アドルが表情に怒りを滲ませた。
ただ、我を忘れるような激情ではなく、こちらを測る様な物言いをする。
「あんたもバルドル人に悪い感情を持っているのか?」
男はアドルの顔を見て首を振った。
「人種で人は判断しない。悪い奴は悪いし、中には気の良い奴もいるだろう。バルドル人を嫌ってるなら、最初から助けたりなんかしなかったしな。」
あっさりとそう答える男にアドルは毒気を抜かれた。
それで信用したわけではないが、一方的な敵意をぶつけるのは得策ではないと判断する。
男は三人を縛りあげてから、いきなりひとりの冒険者の大腿にナイフを突き刺した。無駄のない動きで残る二人にも同じことをする。
「な、なにを···」
驚いてミューフがそう聞くと、男は何事もなかったかのように「尋問だ。」と答えた。
すぐに激痛で男たちが意識を取り戻す。
「ぐ···痛え···」
「てめぇ···」
「··················。」
冒険者たちは憎しみのこもった目で男を睨みつけた。
男はその中で最も憎悪を顔に貼りつけた冒険者の傍に行き、なんの予備動作もなく左胸にナイフを突き刺し抉った。
「「「「··························。」」」」
「さて、尋問の時間だ。」
男は抑揚のない声で淡々とそう告げた。
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