第3話
「まあ、あいつは誤解されやすいけれど、人のことはちゃんと見ているからね。」
そう言うと、受付嬢は興味深げにこちらを見てきた。
「仲がよろしいのですか?」
「それなりにつきあいは長いから。」
「ギルドマスターが冒険者の方と仲が良いというのは珍しいですね。もしかしてナオ様は大物なのでしょうか?冒険者ランクもAですし。」
本当に興味があるのか、受付嬢はそんなことを聞いてくる。あいつは女性にはモテるから、この子もギルドマスターのファンなのかもしれない。
「この都市ならAランクもそれほど珍しいとは思わないけど?」
「確かに依頼には事欠かないので少なくはありません。でも、皆さんパーティーとしてAランクです。ナオ様はソロですよね?」
「それもここのギルマス様様だよ。駆け出しの頃から的確なアドバイスをしてもらえたからね。」
それは事実だった。
あの細かいフォローがなければ早々に死んでいたかもしれない。
「良いご関係ですね。私もそんな風になりたいです。」
「君は君の良さを磨けばいいんじゃないかな。その笑顔の癒し効果は抜群だと思うよ。」
そう言うと、受付嬢は顔を真っ赤にした。
「おい、受付嬢を口説くんじゃない。」
冷え冷えとした声音で注意されてしまった。
視線を上げると、久しぶりに見る顔が受付嬢の後ろにある。
「別にそういうつもりじゃないぞ。」
「どうだかな。おまえの言動はいつも軽い。まあ、いい。執務室にご招待だ。」
忙しくてへこたれていないかと思っていたが、以前と変わらない様子だった。
受付嬢がカウンターから内部へと続く扉を教えてくれたので、その案内に従って立ち上がった。
「拠点移動の手続きは行っておきますので、帰りにお立ち寄りください。」
「ああ、ありがとう。」
俺はそう答えて、ギルドマスターの執務室を目指して歩みを進めた。
扉を開けた先でギルドマスターが待ってくれているが、何となく不機嫌に感じる。
「どうかしたか?」
俺が受付嬢を口説いていると誤解して怒っているのだろうか。
「随分と来るのが遅かったな。」
「まあ、細々とした案件が残っていたからな。それを片付けずに去ると、後任が大変な思いをしただろうし。」
「そうか。そういえば、ライラを救ってくれたそうだな。」
「ああ、あの子を知っているのか?」
面接か何かで顔を合わせていたのだろうか。
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