第2話

グラモントというのがこの都市の名前である。


交易が盛んで、セオドール王国内においては有数の人口を誇っていた。


大きな河川や海に近接しているため、大都市を結ぶ航路の中心として栄えた都市である。


海とは反対側に連なる山々には陸路が開かれており、この都市から出荷される品々は多くの中小規模の都市や村のライフラインと呼べるだろう。


立地の恩恵で豊富な食材が出回り、国内でも有名なグルメ都市でもある。


少し前まで辺境の地で活動していた俺は、そこでの任務が激減したことによりこちらに拠点を移すこととなったのだ。


辺境の地では強い魔物が跋扈し、さらに隣国への警戒が怠れない状況のため、冒険者としての依頼には事欠かかなかった。しかし、俺が専門にしている分野ではほとんど出番がなくなってしまっていたのだ。


「着きました。ここがこの都市の冒険者ギルドです。」


ライラが目の前の建物をさしながら元気のいい声でそう告げる。


辺境の地の冒険者ギルドと比べると、随分と大きい建物で出入りする人の数もかなり多いようだ。ここなら俺が専門にしている案件も多いだろうと思えた。




「拠点をこちらに移すので手続きをお願いします。」


受付カウンターへと行き、受付嬢に冒険者の証であるカードを提出する。


ライラとは職員用の通用口から入って到着の報告をするとのことでつい先ほど別れていた。


「はい、承ります。あ···ナオ様ですね。少しお待ちください。」


受付嬢が慌てたようにカウンター奥へと走って行った。


様子をうかがっていると、彼女から話しかけられた職員たちが一斉にこちらを見てくる。


何だ?


そう思ったが、ひとりがさらに奥の通路へと消えた後に受付嬢が戻って来た。


「お待たせしました。ギルドマスターからナオ様が訪ねて来られたらすぐに報告するように言われておりましたので。」


ああ、そういうことか。


ここのギルドマスターとは懇意にしている。


辺境の地で冒険者ギルドのカウンターチーフをしていた頃からの馴染みだった。


ここへ来たのも以前から誘われていたからというのもある。すぐに来れなかったのは組織的な手続きの関係が理由だった。


「相変わらず周囲に厳しくしていそうだな。」


辺境では職員だけでなく冒険者からも恐れられていた存在だ。


向こうでの最終職位は副ギルドマスターで、半年ほど前に栄転してこちらのギルドマスターに就任した。


「厳しいですけれど、みんなの憧れの人ですよ。」


そう答えた受付嬢の表情を見る限り、嫌われてはいないようで何よりだった。


俺はまるで自分の事のようについ表情を崩してしまう。



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