第4話

「あの子もそちらにいたからな。」


そちらというのは辺境の冒険者ギルドということだろうか。


「そうなのか?裏方として下積みしていたということかな。」


「向こうでは受付嬢の枠が空いていなかったから、こちらから要望を出しておいたんだ。」


受付嬢にも定員がある。


ライラは昇格できるだけの知識と経験を得ていたが、枠が空くまで待ちになっていたということかもしれない。


「なるほどね。」


「その様子だと、一緒にこちらへ来たわけではなかったんだな。」


「こっちに来て絡まれているのを見て助けに入った。冒険者ギルドに向かうと聞いたから案内してもらっただけだ。」


「そういうことか。別に口説いてもいいけど孕ませるなよ。せっかく確保した人員だからな。」


口説くのはいいのか?


先ほどの注意は立場として周囲に聞こえるよう言っていただけなのかもしれない。


まあ、しないけどな。あの年頃の子はどうしても娘のように思ってしまう。全裸で迫られたら応じるかもしれないが。


「盛りのついた犬みたいに言うなよ。」


「そういう意味で言ったわけじゃない。おまえはストイック過ぎるところがあるからな。」


ストイック過ぎるから溜まりすぎて暴走するだろうってことか?俺にも理性はあるぞ。


執務室に到着し、うながされて先に中に入るとカチッと音がした。


どうやらドアの鍵を閉めたらしい。


ん?


振り返るといきなり抱きつかれた。


すぐ唇を押しつけてくるのを見ると、盛りがついているのは彼女の方のようだ。


「はぁ···」


「情熱的なキスをありがとう。でも職場ではしないぞ。」


「そこまで衝動的···ん···」


今度はこちらから唇を合わせた。


舌で唇を押し開けて中に入れる。


「んん···」


首に回された腕に力を込められた。


「これ以上は抑えきれなくなる。続きはまた今度な。」


残念そうな表情にそそられるが、一応は理性のある人間なのでどこぞの性獣のような真似はしない。


「···バカ。」


普段は凛としているのに、こういった恥じらう姿はかわいらしいものだ。


彼女との関係はそれなりに長い。


恋人同士といえるような意思の交換はしていなかった。


俺が専門とする分野は他の受付嬢では扱いが難しいこともあり、彼女が実質的な俺の専任だったというのが一番大きいだろう。


案件の性格上あまり表立って称賛はされないのだが、冒険者ギルドにとってそれは大きな功績となるものだった。



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