第13話 ラウル川攻防戦③

「この度は南部貴族の援軍のおかげで我々東部貴族領は守られました。特に敵陣にて、ゴーレム術者を倒し、更にはあのフルシュ魔法騎馬隊を壊滅まで追い込んだ、カラミタ領軍には感謝しかありません。では、長くなりましたが存分に飲み食べ明かそう!」


「「おう!」」


 無事に宣戦布告前の国境線にて、停戦合意がなされた。東南貴族連合軍はスカサリ辺境伯領にて、戦勝の祝賀祭が開催された。


「ファルよ。お前の息子はどうなってる?」


「初陣でゴーレム二体の撃破。部隊を指揮し、精鋭たる魔法騎兵隊を撤退させるどころか壊滅的な被害を与え、部下は全員が帰還しておりますからね。


 本人は策がたまたまハマったと言っておりますが、鳶が鷹を産んだんでしょうかね」


「今までの領地開発の件などを考えると鷹より梟だな。森の賢者だ。しかし、皮肉だな。魔物から人を守るために作った兵器で人を殺すなんてな」


「それはアウルに言わないでください、ピグロ閣下」


「すまない、口が過ぎた」


 もともとSRセヘル・リッターと銃はテラス・キマ魔物の氾濫の防衛の為に研究開発されていた。

 

 今回の戦闘で使われたSRは基礎となる機体であり、第四開発部の休暇が終わり次第、次の段階の開発が始まる。


「さて、今回の戦功一位はどこにおる?」


「アウルは既に帰路についております。戦功は全て、カラミタ領軍の指揮官たる私にあるということを申しておりました」


「逃げたな」


「はい、逃げました」


 ファルとピグロはSRや銃のことを聞きたい人の波に巻き込まれて、溺れた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「アウル様、宴会に参加されずに良かったのですか?」


「良いんだ良いんだ。あぁいうのは父上に任せるに限りる。出来れば、弟が産まれるかミラに婿を取って貰って、家督を譲りたい」


「これは爆弾発言ですな」


 カラミタ領軍はのんびりと帰途についていた。戦勝であった為か、士気も高く歌いながら歩いている者も多い。


「今回の戦闘、SRを持って来て正解でしたな」


「だな。魔法騎兵が追ってきた時は終わったかと思ったが、全機帰還で死者も零で帰途についている。最高の初陣だった」


「慢心してはいけませんぞ」


「分かっている、アルディート」


 術者殺しはSRの性能ゴリ押しで、魔法騎兵隊は釣り野伏せが上手くいっただけとアウルは判断しているが周りはそうでもない。


 初陣で護衛が居る術者二名を倒し、更に新兵器を用いて、敵軍の精鋭を壊滅まで追い込んだ英雄である。


「我が家に早く帰りたいな」


「ですな」


 アウルとアルディートも兵達に交じって、歌を歌いながら歩く。


「「「「♪♪♪

戦いの果てに勝利の鐘

響き渡る 我らカラミタ

誇りと栄光に満ち溢れ

我らの歌を歌おう


試練と苦難 乗り越えた

仲間との絆で立ち向かう

剣と盾を掲げ進みゆく

勝利への道へと


傷ついた者も癒やしあい

共に分かち合う喜びを

勇気と信念が導く

不屈の心を燃やして


戦いの果てに勝利の鐘

響き渡る 我らカラミタ

誇りと栄光に満ち溢れ

我らの歌を歌おう


次世代へと物語を

語り継ぐだろう時代を超えて

平和を築き 未来へつなぐ

我が勝利の歌は不滅に


たとえ挫折が待ち受けようとも

立ち上がり続ける強さを

共に支え合い 歩みを進め

勝利への旗を掲げよう


戦いの果てに勝利の鐘

響き渡る 我らカラミタ

誇りと栄光に満ち溢れ

我らの歌を歌おう

我らの歌を歌おう

♪♪♪」」」」


 戦争は終わったがアウル達に近づくのは福音かそれとも凶報か。誰も知らない。

 

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