第11話 ラウル川攻防戦①

「男爵、よく来た」


「ピグロ閣下自らご出陣とは思いませんでした」


 既にフルシュ聖樹王国から宣戦布告はされており、東部貴族は出陣しており、ピグロ辺境伯も要請があり、南部貴族をブルーイン領に集めていた。


 カラミタ領からは歩兵百名、騎兵五十名、SR十機、銃兵百名の計二百六十名の出兵となった。南部貴族の合計は約二千名である。


「後ろに居るのがカラミタ領の虎の子か」


「ウチというか、息子の私兵ですな。アウル!」


「ご無沙汰しております、ピグロ閣下」


「誕生祭以来だな。初陣だから生き残ることだけを考えるのだぞ」


 銃やSRは良くも悪くも目立っており、ピグロ以外にも多くの貴族の興味を引いていた。


「さて、遅刻しないように行くかの。南部貴族軍、出陣!」


「「「おう」」」


 ブルーイン領から前線までは一週間の行程であり、難所もあるが、途中の村々で補給することも出来る為、物資の余裕がある行軍であった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「なんだと、開戦して三日だろう? 敗退とはどういうことだ?」


「敵は大型ゴーレムにて、味方前線を崩壊させ、魔術により追撃し、東部貴族連合は戦線を下げております」


 東部領に入り、案内役の東部貴族が持ってきた情報を聞いて、南部貴族軍は困惑した。


 フルシュは種族的に魔法を得意しており、戦術も魔法主体であった。大型ゴーレムを戦争に使うのはシリウス帝国であった。


 何より開戦三日で東部貴族連合軍が敗退しているのは、予定外であり、事前の想定が覆ってしまった。


「一旦、東部貴族に合流が先決か」


「現在、東部貴族連合はラウル川を挟んでフルシュ軍と対峙しております」


「了解した。移動開始するぞ!」


 南部貴族連合軍は東部貴族軍へ合流するためにラウル川へと向かった。


「大型ゴーレムかぁ。ゴーレムを壊すのは面倒くさい。やるなら、術者を狙うのが一番だな」


「どうした、アウル?」


「いえ、前線に居るというゴーレムをどうやって倒そうかと思って」


「なるほど。魔法で破壊するのが普通だが大型ゴーレムなら軍用魔法を使う必要があるが、フルシュの魔法使いの抵抗もあるから、現実的ではないな」


「やはり、そうですよね。ゴーレムの術者を殺すのが一番ですね」


「だな。一応、合流するまでは一緒に行動しろ。その後は、自由にやれ」


「了解しました」


 アウルが率いるSR隊及び銃歩兵は南部貴族と一緒に行動はしている。しかし、義勇兵のような扱いである為、ある程度の自由な行動が出来る。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ピグロ殿、来ていただいて感謝する」


「スカサリ殿、気にしないでくれ。現在の状態を詳しく知りたい」


 大型ゴーレムは五体。既に軍用魔法にて、破壊を試みたが防御魔法により、妨害されて失敗。東部貴族軍の被害は一割程度であり、南部貴族軍の合流により戦力差は同等となった。


「大型ゴーレムの処理が第一の課題だな。我々も魔物の警戒の為に魔法使いはあまり連れて来ていない」


「術者の排除が優先ですな。術者は帝国人と判明している為、狙いやすいと思います」


「誰が殺るかだな」


 ゴーレムを動かすためには近くに術者が居ることが条件である。場所の特定は容易であるが護衛が居る為、攻撃部隊は決死隊となる。


「ピグロ閣下、発言をよろしいでしょうか」


「いいぞ、ファル」


「ありがとうございます。攻撃部隊は我々に任せて貰えないでしょうか?」 


「ふむ」


 ピグロはファルの提案を聞き、考える。誰かはやらなければならない役割である。カラミタ領は農業の発展も著しいがカラミタ商会から収入もあり、経済も右肩上がりである。


 更にフラルゴやアマンダのような各国の奇抜な思考を持つ者を集め、兵器を開発しているなどの噂がある。


「勝算があるのだろう?」


「はい。息子なら遂行出来ると思います」


「分かった、任せる」


「かしこまりました」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「攻撃開始ッ!」


 ラウル川を挟んで、弓と魔法の応酬が始まった。ゴーレムはまだ動いておらず魔法隊が全面に出て、戦闘が行われている。


「オネスト、各部隊の状態は?」


「万事抜かり無く」


 アウル隊は昨晩のうちに王国軍本陣から離れ、フルシュ軍近くの森に潜伏していた。


「さて、観測班は術者の判別を急げ」


「了解!」


 後にラウル川攻防戦と言われる戦いが始まろうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る