第9話 SR始動
アウル達が王都から戻り、既に三ヶ月が経った。サージの手配もあって、アマンダもカラミタ領に無事に到着していた。
フラルゴとアマンダは知り合いだったらしく、再会を喜んでいたがすぐに
「なるほど。流石、ゴーレム研究を百年は縮めたというフラルゴ博士ですね」
「そんなことないよ。抽出魔法陣の効率を3倍も上げて、更に還元魔法陣を作るなんて、アマンダ博士は天才だよ」
この2人によりSR計画はかなりの進捗を見せ、起動試験型SRが出来上がった。
セヘル・リッター(起動試験型)
全高 4m
重量 400kg
装甲 青銅
武装 剣
騎士というよりはゴーレムが少し人間に近づいたような姿をしており、動作もぎこちない。
「アウル様ー 聞こえていたら右手を挙げて下さい」
アウルは意識を集中し、右手を挙げた。夢の中の特殊装備は科学の叡智であり、更にはAIによるサポートもあって、高速戦闘などにも対応していた。
現在はSRの操作方法は魔力で機体を包み込み、SR自体を身体の一部と認識することで操作している。正直、根性である。
起動試験は開始から既に一ヶ月過ぎて、基本動作は出来るようになったが、戦闘はまだまだであった。
「これは疲れるな。歩くだけでも神経を使いすぎて、殺る前にこちらが死ぬ」
「ですね。流石にゴーレムのように操り人形みたいな操作方法では上手くいかんでしょうし…」
「うん? 操り人形でいいんではないか? 人間の関節と機体の関節を魔力で接続すれば、スムーズな行動が出来るようになりそうだ」
「アウル様、流石です! しかし、人間に魔法陣を彫る訳にはいきませんし、なるほど。服に仕込めば良いですね。
確か、第一開発部のエルフに織物が得意な奴が居ましたね。ちょっと拉致って来ます」
アウルの一言にフラルゴ含む第四開発部の面々が慌ただしく、行動していた。
後に開発されるSR用
「アマンダ博士の所に行って来ますねー」
「はい、了解です」
フラルゴに席を外すことを伝えると開発部がある通りの一番奥に向かった。
「アマンダはーかーせー」
「はーい」
アマンダの研究室に前回来た時、返事が無く、生存確認の為に入った所、侵入者用の魔法陣が発動し研究者が一人死にかけた。その後、研究室前には必ず、アマンダが出てくるのを待つことと書かれた立て看板が作られた。
「いらっしゃい、アウル君」
「……アイに会いに来ました」
少し日にちが経つとアマンダはアウルのことを君付けで呼び、立場を気にせずに弟のように甘やかしてくる。このように接してくる人が居なかった為、アウルは困っていた。
カラミタ領でのアマンダの役割は開発部相談役となっている。SRの開発だけではなく、多方面に協力して欲しいと研究者達から要望があり、相談役となった。
相談が無い時は自室で自分の研究しているが、その成果が先程、アウルの口から出たアイである。
疑似精霊理論。文字通り、擬似的に精霊を作り上げる理論であるが非常に作成条件が難しい。依り代となる魔石はオーガ以上、適切な魔力を1ヶ月以上与え続けなければならない。だからこそ、抽出魔法陣及び還元魔法陣が必要となり、魔粒子理論を理解してなければ疑似精霊は生成されない。
カラミタ領に来てから生成されたのが、疑似精霊アイ。名付けはアウル。AIをそのままローマ字読みしただけである。
「おはようございます、マスタ」
「おはよう、アイ」
アイはアウルをマスタ、アマンダをマザーと呼んでいる。最初は片言の言葉でしか話せていなかった。しかし、今は流暢な言葉を話し、思考している。
「おはよう〜 アイ〜 今日とて、勉強しようか〜」
「はい、シオン先生」
疑似精霊のアイの先生は精霊のシオンが担当しており、アウルの時間がある時は必ずアマンダの研究室に来ていた。
「まさか、アウル君が契約者なんてねぇ」
「知っているのは極僅かですから、漏らしたら即刻奴隷落ちですからね」
「恐ろしや。アイの魔法制御も上手くなっていますし、そろそろ実戦で訓練しようかと思います」
「分かりました。申請を出して頂ければ、護衛も出せるので必ず申請をお願いしますね」
「ダンテさんみたいになりたくないので、必ず申請するわ」
また、新兵器を申請無しで実験し、大爆発を起こした。アウル達より先にダンテの奥さんが到着しており、既に折檻していた。
一応、半年の減俸処分とボーナス無しで確定した。それよりも一ヶ月間も家に入れてもらえなかった方がダメージが強かったようだった。
「シオン。俺も勉強の時間だから、屋敷に戻るね」
「ラジャーです」
十五歳の成人に向けて、領地運営や法律などの勉強が始まっており、時間の制限が出来ていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
三日後
訓練所を走り回るSRの姿があった。アウルが提案した服はバトルスーツを呼ばれるようになり、SRとの連動には必須となった。
「めちゃくちゃ制御しやすいよ!」
「ありがとうございます! 次は戦闘試験と行きましょう!」
試験用SRの武装は大剣一本のみであるが、今後も武装開発は続いていく。
「では、ゴーレムを起動させます」
「よろしく!」
世界一のゴーレム制作者が作り操る最強であろうフラルゴ印のゴーレムが起動する。
「では、行きます」
ゴーレムがジリジリと間合いをジリジリと詰めてくる。ゴーレムとは思えないハイキックが一瞬で飛んできた。剣でハイキックを止め、そのまま剣を地面に突き刺し、軸にして蹴り返した。
更に距離を詰め、
「あ、アウル様。あのですね、SRは
それにしても、私が操るゴーレムをここまで一方的に仕留められるとは思いませんでしたよ。
帝国の軍団の中では、ゴーレムの扱いで負けたことは無かったのですがね……」
アウルが乗っていたSRはあちこちの魔法陣から煙が出ており、戦闘に勝利したがかなり無理させていた。
「後で報告書の提出をお願い致します」
「了解です、フラルゴさん宛に送りますね」
今回の戦闘をもとにSRは
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