第3話 第三開発部
「お兄様! 三十分も遅れてます!」
「すまない、母上と話していたら遅れた。第三開発部までお願いします」
どうにか部屋に辿り着き、着替え中に全てを脱がそうとするカミラを追い出したらいつの間にかに約束の時間は過ぎていた。
「カミラを専属にされたのですね」
「母上からの強制だったよ」
横に堂々と座っているカミラを見ながらミラはアウルに問いかけたがカミラと視線が交わると不穏な雰囲気を出した。
「ミラ、僕が捕まらない時はカミラに聞いてくれ」
「分かりましたわ」
馬車は三人を町外れまで連れて行くと止まった。
「アウル様。音で馬が暴れてしまう為、ここまでよろしいでしょうか?」
「大丈夫だ、ありがとう」
開発部の施設がある方向から何かが爆発する音と煙が上がっている。馬は繊細な生き物で前に驚いた馬に振り落とされたのは良い経験になった。
「ミラ、カミラ。歩こうか」
「「はい」」
少し歩くと2つの家屋が道を挟んで作られていた。左側からは継続的な爆発音、右側からは邪悪なオーラが醸し出されている。
「第三は実験三昧、第六は開発が進んでなくてヤバそう雰囲気が出ているな」
「は、はい。今度、第六に所属されてる方にお休みを与えたらどうでしょうか?」
「昨日、休むように言ったら私達は不要ですかと泣きつかれた。今は休まない方が良いらしい……先ずは、第三の方に行くか」
昨日、アウルは第六開発部との進捗確認と打ち合わせをしていたら、白熱してしまい帰宅が遅れた。
「ダンテ! 居るか!」
「はい! アウル様!」
ダンテはピグロ辺境伯領で奇抜な武器を作ることで有名なドワーフであった。その話を聞いたアウルが夢の中で見た銃の図面とダンジョンから発掘された魔法銃を渡した所、興味を持ち、今はカラミタ領第三開発部室長として、銃の研究開発改良に勤しんでいる。
「調子はどう?」
「良い感じです! ライフルは計画通りにライフリングや元込め式、金属薬莢を採用した
「ダンテ?」
「なんでしょうか?」
「実地試験を行ったと報告が来てないが?」
ダンテから悲鳴があがる。無許可の研究開発や実験はいつものことであり、事後承諾は慢性化していた。
いくら注意しても改善が無かった為、諦めていたが1つの光が見えた。ダンテの嫁である。
もともとダンテの店の経理や接客を担当していたということで頭が上がらないらしい。無許可の話を聞いてダンテをシバいたらしい。それから三ヶ月間は問題無かった。
「…カミラ、ダンテの奥様によろしくと伝えてくれ」
「かしこまりました」
ダンテの顔色が徐々に青くなっていく。それは自業自得だ。アウルは気にしないことにして、話を続ける。
「実地試験の内容は?」
「銃持ち四人と兵士二名です。魔の森付近にて、オーク一匹、ゴブリン三匹を発見。
五百mから射撃を行い、オーガとゴブリン二匹は頭に当たり即死。残りは右肩より下を失い、森へ逃げようとしましたが第二射により、死亡しました。
一週間程度、実施いたしましたがオーガにも有効であると証明されたので計画に基づいて、生産を開始致しました」
「了解した。銃の開発は軍機である為、許可を取り付けてから行動するように」
「かしこまりました。また、魔法銃と銃の中間のような銃の可能性を探っております。大まかな見通しが立ちましたら、報告書を提出致します」
「分かった。今日、家に帰らないと殺されるな」
「帰っても殺されますよ、アウル様」
公私をしっかり分けて、実地試験の報告を受けたアウルだったが最後は少しダンテをイジった。
ダンテに断りを入れ、施設内にある試射エリアに行くと銃の状態を確認しレーンに立つ。
一瞬の静寂からターン、ターン、ターンと乾いた音とリロード音が響き、その後から金属と金属がぶつかる音が聞こえた。
「九百mレーン全弾命中、流石ですね。鍛冶の才能はありませんでしたが射撃の才能は十二分にありますね」
「好きで不器用になった訳じゃないわ」
ダンテから褒めているのか貶しているのか分からない言葉を受け取り、第三開発部を出た。
「お兄様、流石でした!」
「ありがとう。第六は第三より殺伐としてるから周りに気をつけるんだよ」
「はい、分かりましたわ!」
ダンテから預かった生産計画などの報告書を見つつ、アウルは第六開発部に移動するのであった。
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